『トレーナーとして試合に帯同する』
雑誌やTVとかで、有名なトレーナーさんが試合に帯同してる場面を見ることがあると思います。
けど先の記事で挙げた通り、遠征の実際を発信してる人ってホント少ないんですよね。
ということで、トレーナーの試合帯同。実際何をしてるかの記事、今回は
現地でトレーナーがやっている体のサポート
について書いていきます。
なお先に断っておきますが、僕は今テニスの試合(国内の全国大会、海外の国際試合)に帯同することがほとんどです。
以前は他競技の遠征も経験しましたが、昔と今では変わってることも多いでしょう。
僕はこんな立場から記事を書くので、全ての遠征が僕の記事のようなものだとは思わないでくださいね。あくまで一例です。
何をするの?→やれることは全部やります
遠征って具体的に何するんですか?って聞かれるんですけど、何とかじゃなくてできること全部やります。
こと体に関しては、
- 試合前のウォーミングアップ
- 練習中のフィジカル的アドバイス
- 試合、練習の合間にアップやケア
- スポーツマッサージ
- 治療全般
- 緊急時の対応、応急処置(一次救命など)
- 病院への付き添い
- 試合後のコンディショニング
- 食事のアドバイス
- セルフケアの指導
などなど、挙げればキリがありません。そして無論、全てできるに越したことはありません。
僕は理学療法士ですが、現場に出ると↑のこと全てやります。
もちろん、それなりの知識や技術を勉強して身につけないとできません。
で、なんとなく皆さんここまではわかると思います。
問題は、これを「いつ、どんな風に、どのくらいやるか」なんですよね。
個人的には、これを適切にできるかどうかで選手のパフォーマンスは大きく変わります。
遠征という仕事の醍醐味とも言えます。
遠征の一日はこんな感じ
とある海外遠征の一日
6:00 起床、準備
6:30 朝食
朝食はホテルの場合はビュッフェだったりしますが、安いモーテルやコンドミニアムとかだと自炊することも多いです。
7:00 会場に向けて出発
テニスの場合、試合がいつ終わるか予想がつかないです。陸上や水泳、サッカーのように一試合にかかる時間が想定できないので。
なのでテニスの国際試合は OP(オーダーオブプレイ)といって、こんな感じで↑一日の予定が前日に張り出されます。コートナンバーと試合の順番。甲子園の試合をイメージするとわかりやすいでしょう。第一試合は大阪桐蔭vs東北 第二試合は智弁和歌山vs鹿児島実業…みたいなのと同じです。野球と違うところはいくつかありますが、まず勝ち残ればシングルスとダブルスを一日1試合ずつやるところでしょうか。↑の OPを見るとわかりますが、ざっくり午前はシングルス、午後からダブルスとなっています。
このOPをもとに、一日のスケジュールを逆算して決めています。
例えばこの日であれば、シングルスが第二試合(第一試合が9時〜で、それが終わり次第開始ということ)なので、9時以降はいつでも試合に入れる準備をしておこう。そのために9時までに練習やアップを終わらせたいから、逆算してこの時間に起きて食事しよう、みたいなやりとりを事前にしています。
7:30~8:00 ウォーミングアップ
朝一のアップは、車に例えるとエンジンをかけるようなイメージです。
理想は、
- 軽くジョグ→深部体温をあげる
- アクティブストレッチ
- ファンクショナルムーブメント
- スピード、プライオ、反応系
- より競技に即した動き、スピードのメニュー
こんな順序でやれればいいですね。
そして、テーピングが必要な選手は、練習前のこの時間を使ってやります。
しかし汗をかいてしまってから貼るとすぐ剥がれるので、できるだけ運動前に貼るようにしています。
8:00~8:45 オンコート練習
アップが終われば、試合前の練習です。
テニスはOPの関係上、試合前の時間でコート解放があり、みんなで練習します。
場合によっては日中も練習コートを用意してくれたりもしますが、スケジュールが立て込んでる日は朝しか練習できない、とかもあります。
この時に、痛みがある選手に対しては体や動きを確認したりします。
ここで動きの分析ができれば、練習が終わって試合が始まるまでの間に対処ができるからです。
11:00~ 試合開始(シングルス)
第一試合が終わって、第二試合が回ってきたのが11:00。
ここから試合開始になります。
この日、試合が終わったのは13:00すぎでした。
テニスは試合時間も長いですし、待ってる時間も長いんですよね。
13:30~ 体のケア、昼食
試合後は、会場のメディカルルームを使って体のケアをします。
ここでは主に
- スポーツマッサージ
- 治療全般(徒手・器具両方)
- テーピングの貼り直し
をします。
ここで注意が必要で、試合の合間にケアするときは、場合によっては筋を緩めすぎないようにしています。
筋を緩めると疲労は取れ体は軽くなりますが、そのぶんリラックス効果(副交感神経)が優位になるので、直後に試合があると逆に動きが鈍くなったりします。
なので、体のケアをしてから試合がすぐに入りそうな場合、必要最小限の循環改善だけを徒手でケアします。
反対にケア後から試合までの時間が長い場合、あえて集中を切るために、一度完全に全身を緩めてリラックスさせたりします。緊張状態はずっとは続かないですから、一度心身ともにオフに持って行って、次の試合時間の頃合いをみてもう一度アップし直す、という流れです。
この日はダブルスが16:00以降と決まっていたので、一度全身を緩め切る方向でケアしました。
17:00~ 試合開始(ダブルス)
ダブルスが始まったのは午後5時。けど、これでもまだ優しい方です。
午後9時から試合(ナイトマッチ)とかもふつーにありますから。。
この日は試合自体はスムーズに進んだのですが、途中何度かスコールに見舞われて中断を繰り返し、試合が終わったのは18:30でした。
18:30 試合終了、軽くダウン後、宿舎に帰宅
19:00 帰宅、シャワー浴びて晩御飯の準備
20:00 晩御飯、体のケア、ストレッチ指導、明日のミーティング
夕食も朝食と同じく、外食する場合もありますが自炊がほとんどです。
そして食事が終われば体のケア、そして次の日のスケジュールをミーティング。
長い一日が終わります。
20:30 解散
西川のモットーは「やりすぎない」こと
遠征中の一日を見ると、結構忙しいのがわかると思います。
「忙しい」というのは、僕ではなくて選手のことです。
試合や練習の時間に合わせて行動することになるので、準備することも多いし合間の時間もメンタルコントロールする必要があります。
なので僕のモットーは、遠征中はトレーニングにしてもケアにしても「やりすぎない」ことを意識しています。
合宿だったらいいんですよ、追い込んで。
しかし遠征ですからね。試合でベストを出すためのサポートなので、少なくても選手が自分で体のコントロールできなくなるくらい追い込んだり筋を緩めすぎたりはしません。
そしてもう一つ。アップにしてもストレッチひとつにしても、僕は選手が普段やっているルーティーンを大切にしたい派です。
自分の介入は、それのプラスアルファ。プレーヤーだった人はわかると思いますが、例えばアップをする時っていつもメニューをやりながら自分の体と対話してるものですよね。もっというと、体のアップをしながらメンタル的なボルテージを上げていったり、技術的なイメージを膨らませたりしているはず。
選手自身がやっているルーティンには、心技体知全ての準備を整える意味もあると僕は考えているため、必要以上の介入はやらない方針にしています。
ま、ケガしてて普段と違う状況とかなら話は別ですが。
…とまあ、こんな感じで長くなりましたが、遠征の一日とトレーナーとしてのサポート内容の紹介でした。
次はもうちょいコアなところも書いていこっかな。テーピングのやり方とか。
では。
追伸:スポーツを仕事にしたい理学療法士の方へ
- 自身の現状(勤務状況やスポーツとの関わり)、今後の目標を話していただけること
- 配布動画を全て見て、その後感想などの連絡をしていただけること
- スポーツ分野を仕事にしたいという強い気持ちがあること