こんにちは、西川です。
ブログ書くのは久しぶりですね。
中国での仕事がかなりバタバタしていたので、記事を書く時間が全くありませんでした。
中国に来てからずっとバタバタしててまともに発信出来てませんが、本業に集中するってのはいいですね😄ガッツリ仕事して、1人反省会して、英語の勉強して、空いた時間で日本の仕事をやってという感じなので、発信は完全に後回しです。発信できないくらい何かに没頭する時期も、大事な気がしてます👍 pic.twitter.com/JU4Y22CpoU
— 西川 匠 (@physio_tennis) 2019年7月9日
おかげさまで色々と現場での知見も貯まってきたので、それは改めてブログやSNSで発信しようと思いますが。
今回のテーマは、タイトルの通り僕が試合帯同時に気をつけていること です。
主にトレーナーさんや理学療法士向けの内容になりますね。
日本は今、夏の試合シーズンですから、試合帯同ってどうすりゃいいの?って疑問な人は是非どうぞ。
試合帯同は、選手(チーム)の雰囲気や空気感のアシストが命
いきなり結論になりますが。
試合帯同で僕が最も気をつけているのは、選手(あるいはチーム)の雰囲気や空気感を正しく読み取り、そのアシストをすることです。
(簡単に書いてますが、説明するのも実践するのも簡単ではないのですが笑)
トレーナーが帯同する試合というのは、およそ消化試合よりも重要度の高い、重要な位置づけである大会がほとんどだと思います。
そうした大きな試合(または選手にとって大事な位置づけの試合)の場合、選手は普段の状態とはかけ離れた心理状態にあることが普通です。
具体的に挙げてみると、
- 勝ちたい気持ちで力んでいる
- 負けたらどうしようという不安で、地に足がついていない
- 試合会場の雰囲気に飲まれてしまっている
- 他のチームメイトまたは他の選手の状態が気になる
というのは、毎回帯同してると遭遇します。
ちなみにこれは、どのレベルの試合にも言えることで、僕の先輩トレーナーが先日のウィンブルドンに帯同されていたのですが、全く同じことを言われていました。
数日前、今回のウィンブルドンに選手の帯同で行ってる先輩トレーナーと電話してて、トレーナーの舞台裏を聞いてました。
言える範囲で言うと、
・どのトレーナーも「チームの空気作り」がうまい
・やってることは皆同じ
・アップの場所狭くて取り合い必至
・メニューは流行り廃り激しいとのこと。 pic.twitter.com/76FzwqzbRQ
— 西川 匠 (@physio_tennis) 2019年7月10日
トッププロ最高峰の試合ですら、同じ現象が起きてるというのは興味深いですね。
みんな、なんだかんだ生身の人間だということがよくわかります。
で、話を戻すと、特殊な環境によって選手が混乱してしまうのには、ある共通点があると個人的には思っています。
自分自身の「今、ここに」に集中できていない状況
試合会場であまりよろしくない心理状態の選手に共通することは、「自分が試合で何をすべきか」「普段の感覚を大事にしているか」など、自分自身の課題や感覚に目が向いていないという点です。
スポーツでの集中において、「Now and here(今、ここに)」に自分自身で目を向けることがベストパフォーマンスを生む、ということは、スポーツ心理学の大元になったインナーゲームでも語られていますね。
↑インナーゲーム。大元は35年ほど前のものですが、色褪せることなく今も学ぶことが多いです。
この「今、ここに」に集中できていると、ベストパフォーマンスに近づきやすくなるのですが、試合のような特殊な環境に身を置かれると、どうしても普段意識しているはずの「今、ここに」が意識できなくなってしまいます。
いうまでもなく、過度な緊張やプレッシャーがあると、本来の力は出せないもので。
選手やチームとしては、重圧ある状況の中でも、普段自分が意識している「今、ここに」に目を向けてもらうことが大切になります。
※適度なプレッシャーはパフォーマンスに好影響ですが、試合には独特の重圧があるので、放っておいても適度なプレッシャー状態にはなるので、わざわざ緊張を高める必要はあまりないかと思ってます。
なぜトレーナーが空気作りをしなければならないか
で、こうした選手の心理的変化を見抜いたり、そのアシストをすることは、基本的にトレーナーの仕事だと個人的に思ってます。
理由は単純明快で、トレーナーはその日一番最初に選手に関わる立場だからです。
例えば、遠征で朝起きてみんなで一緒にホテルのご飯を食べて、試合会場へ向かう。
そして、会場入りして練習するわけですが、その前のアップとして最初に関わる(あるいは痛みや違和感があれば体をチェックする)のがトレーナーになりますよね。
コーチは、この段階で関わることはあまりなく、練習が始まってから、あるいは練習が終わって試合を迎える間なんかにアドバイスしたり関わったりすることがほとんどです。
なので時系列的に考えて、練習前のアップやもっというと会場に向かい道中も含めて良い雰囲気・空気感を作り、朝の練習やその後の試合に弾みをつけることは、最初に関わるトレーナーによって左右されることも少なくないと思っています。
これは選手によって状況が様々です。
例えば、朝一に挨拶を交わした雰囲気で、「あ、今日はめっちゃ自分の世界に入ってるな」と察した場合、あえて無駄に声をかけなかったりします。一方で、一つ一つ声をかけ、感覚をチェックしなければいけない心理状態の選手もいます。
見極めは簡単ではないですが、普段の選手を観察することで、気がつくことも出てくるかと。
なのでトレーナー目線でいうと、実際フィジカルに関わって仕事している時間は短くても、一日中アンテナを張っているのでめっちゃ疲れるのが遠征なのですが…それでも、良い雰囲気で選手やチームがベストなプレーをしてくれて、それで目標まで届いた時に感動が共有できるので、遠征の帯同は個人的にしんどいですが一番好きな仕事でもあるんですよね。
アップメニューは「選手の安心」を優先
そして、実際に選手とアップをする上で、僕自身が気をつけていることは、
- あえて得意なメニューやいつも完璧にこなせてるメニューをする→感覚を確かめると同時に、会場の雰囲気に馴染んでもらう
- 普段のトレーニングや練習で意識していることをピンポイントで意識しつつ、アップをする→「今、ここに」に集中するため
というのは、かなり気を使うようにしています。
極論、ウォームアップのメニュー自体は、ある程度勉強しているトレーナーであれば誰がやってもそんなに大差ないと思うんですよね。
ジョグなどで深部体温を温めつつアクティブストレッチをして体を慣らし、競技動作を少しづつ確認していき、スピード・プライオ系で爆発力を出せるようにする。極めてベーシックですが、基本これで十分かと。
それよりも、選手が体だけでなく気持ちの面でもベストコンデイションに持っていくことができるか、そのためのアシストを考えることの方がはるかに大切だと思っています。
少し話は変わりますが、ある大きな大会で、トレーナー仲間がウォーミングアップでベンチプレスを選手に提供しているのを見かけました。
あまりウォームアップでは見ない光景で不思議に思ったので、そのトレーナー仲間に聞いてみると、その選手は筋トレとしてではなく感覚を確かめるために日常的にベンチプレスを行なっていて、試合前にいつもの感覚か確かめたいという意図があって行なっていたことがわかりました。
教科書的なウォーミングアップではほぼベンチプレスなんていう選択肢はありませんが、これも選手が「今、ここに」集中できるための環境作りとしてであれば、なるほどと思いますよね。
この例のように、アップメニュー自体はベーシックなものでもいいでしょうし、その選手に合うようカスタマイズ(あるいは状況に応じて変える)すべきでしょうが、一番は体と心のアイドリングを完了させるということかと思います。
まとめ
記事を開いて、「どんなアップメニューが載ってるんだろう!」って期待された方はすみません笑
ただ、現場はいつでも生き物であり、空気感や雰囲気をアシストすることで、アップメニューの組み立て以上のパフォーマンスが出るのも事実です。
そういう意味では、ウォーミングアップはアップする前から始まってる、と言い換えることもできるかと。
個人的には、その日起きて朝一番に選手と接した感じから、もうすでに心と体のウォーミングアップは始まってると思っています。
夏の試合は毎年ドラマが生まれますが、みなさんのトレーナー活動においてこの記事が何か役に立てば幸いです。
ほなまた。
追伸:スポーツを仕事にしたい理学療法士の方へ
- 自身の現状(勤務状況やスポーツとの関わり)、今後の目標を話していただけること
- 配布動画を全て見て、その後感想などの連絡をしていただけること
- スポーツ分野を仕事にしたいという強い気持ちがあること