シリーズ4話目のテーマは、
「U12で体が小さくて勝てなかった選手が『U14以降で飛躍したorそのまま勝てずに消えていった』事例」
U12〜14の世代によくみられるのが、
テニス自体は悪くないと言われるのに
発育が遅くて勝てないケース。
まずは、画像を見てみましょう。
サポートさせてもらっている現場のジュニアが、
ずいぶん前にフロリダに行った時の写真です↓
一番左、青の服を着ている現地のジュニアと
その右、ラケットを杖代わりにして立っている
日本のジュニア。
二人とも、同じ10歳です。
さて問題です。
両者、テニスの技術が一緒なら
どっちが強いでしょうか?
言うまでもありませんね。
「発育が早い」と言うのは、本来の成長期
(男子は13歳前後、女子は11~12歳)よりも
成長期が早く訪れる、という状態です。
子供の成長期は本当にそれぞれで、
僕が経験している中では10歳で成長期を
迎える選手や、反対に男子だと高校2年生で
PHVがやってきた例も見てきました。
それくらい、伸びる時期は個人差があるんです。
発育が早いと、筋力の絶対値(特に背筋力)や
エネルギー系の能力は高いことが多いので、
ラケットを振り回す力がない低年齢の中では
大きなアドバンテージとなります。
反対に、発育が遅いとどうでしょう?
どうしても、発育が早い選手に
勝ちにくいものです。
たとえ話ではなく、発育の早い・遅いの違いで
同じ10歳でも生物学的に8歳のジュニアもいれば
13歳のジュニアも存在します
(生物学的年齢と言います)。
まさに大人と子供が戦う。
そんな構図が、U12やU14の世代では
行われています。
では、「発育の遅いジュニア」は
どうすればいいのか?
不利な状況で戦い続けないといけないのか?
という問題ですが、
発育が遅くて不利でも、差を埋める方法はいくつかあります。
以下に、方法と具体例を挙げます。
方法1:身長を伸ばす工夫をすること
前記事で、もみの木クラブから
身長の最終地点を予想する方法を書きました。
(まだ見てない方はリンクから見てください)
これで出てくるのが、何も工夫しない場合の
最終の身長です。
実は多くの場合、以下をしっかり行うことで
本来の最終身長よりも伸ばすことができます。
・栄養管理…特に運動後のタンパク質補給
・睡眠管理…PHVが終了するまでは、できるだけ早く寝る
特に、睡眠管理は難しいですが大事です。
テニスクラブのシステム上、レベルが上がると
上のクラスで練習することが多いですが、
上のクラスは多くは遅い時間に練習しますよね。
これが難しく、成長速度曲線を取っていると
上のクラスに上がった途端に身長が伸びなくなった
というケースが結構あります。
そこで練習量を減らして、例えば週4を週3に
とか、少し早く切り上げるとか工夫をすれば
また伸びるようになった、というケースも
ありました。
栄養管理は複雑なので別の機会に書きますが、
こうした工夫をすることで実際に伸びたケースを
紹介します↓
上から3番目の成長ラインに沿って発育していた
選手が、栄養管理と睡眠管理を工夫しだすと
成長曲線に変化が出てきました。
もう一人、これは僕やエナジーのブログで
度々出ています、通称キミレンコ。
現在のジュニア女子ナショナルチーム選手です↓
※右です
この写真はオランダのITFジュニアで
優勝した時のものですが、並んでいる外国人選手
大きいですね。170cmはあります。
対してキミレンコは158cmで大きくありませんが
当初の予想では、155cmになればいいかな…
ぐらいだったそうです。
それが栄養管理と睡眠管理で
発育を促進され、トップまで上がった例です。
何が言いたいかというと、
「早く寝ましょう!」ということです。
(ダラダラして寝るの遅くなるとかは論外です)
方法2:成長期が来るまでにコーディネーション能力やテニスの技術をできるだけ高めておく
コーディネーション能力とは、自分の意のままに
体を操る能力です。
※コーディネーション能力は他にもいくつか
種類がありますが、ここでは
「意のままに操る能力」と考えてください。
これは神経系のトレーニングで養うことができ、
この能力があるとボールを打つ時の
エネルギー効率がまるで違います。
論より証拠、動画を見てください↓
※30秒くらいです
わかりやすいように、ストロークで使う
回旋系のコーディネーショントレーニングを
いくつかまとめてみました。
全て、場面は違いますがストロークで
使われる動きです。
動画のように自由に動けば、なんとなく
いいテニスができそうな感じがするでしょ?笑
実際、「意のままに体を操る能力」があると
発育の差を埋める手段になります。
※ちなみにこれは、怪我の予防にも効果的です。
そして、体が小さくてラケットを振り回す
力がないジュニアも、この能力があれば
それを補うこともできます
(というより、動画のようなトレーニングも
最低限の筋力がないとできないので、
やってる内に勝手についていく)。
そして、このように土台を作った後は
できるだけテニスの技術を高めておくことが
大事ですね!
U16の時期になると、発育が遅いジュニアも
発育が早いジュニアに体格が追いついてきます。
その時に技術力で勝てるように、
成長期までにこうした神経系を鍛えるのが
大切です。
方法3:身長を管理し(成長曲線など)、今後の心構えをしておく
これが一番大切です。
下のグラフを見てください↓
発育が早いジュニアに10歳以降引き離されますが、
16歳くらいには追いついてきて、18歳には
追い越しています。
こうしたケースはよくあります。
発育が遅くても、後からある程度
追いつくものなんです。
しかし難しいのが、
「いつ体が大きくなって勝てるようになるのか分からない」
ということ。
発育が遅いジュニアが失敗するケースの多くは、
「いつ大きくなるんだろう…」と何年も悩み、
その間は負けが続き精神的に折れてしまう。
ちょうど中学〜高校の受験シーズンもあり、
進路のことも考えると、諦めるしかない…
と、テニスを諦めてしまうケースです。
その不安を防ぐために、前記事に書いた
最終身長の確認や、成長曲線や身長ー座高などの
データを取っておくのです。
「いつ、どのくらい伸びそうか」
「もうそろそろPHVが来そう」
など、データから少しでも見えることがあれば
不安も軽くなります。
これらのデータは、精神安定剤としても
効果のあるものです。
…今回はとても長くなってしまいました。
長文なのに全部読んでいただいて
ありがとうございます。
やはり発育が遅い選手は、成長が追いつくまで
不利なケースが多いのは仕方ないですが、
一方で遅咲きで伸びる可能性がある選手もたくさんいます。
(そんな選手が潰れていくところも、
嫌というほど見てきました)
そうした選手の可能性を潰さないように。
もっと活躍のチャンスを掴めるように。
そのために書いていますので、次回も変わらず
長文になると思いますが(笑)、
よろしくお願いします。
次回/「発育の早い選手」を襲う問題!発育が早い=いつまでも強いではない。
2018.4.24 追記
※このシリーズの記事は、以下から全て見ることができます。
まだシリーズ過去の記事を読んでいない方は先に過去記事を見てください。
最終章も追加しました。
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