今日は前提となる知識のお話で、
トレーナーやフィジオはもちろん
コーチや保護者の方、そしてジュニア本人にも
共有したい知識を書いていきます。
(ちょっと難しい部分もありますが、大事な
体のことなので、最後までお付き合いください)
 
 
 
 
一般的には「体の成長」と簡単にまとめてますが、
成長は二つに分けられます。
「発育」と「発達」です。
 
 
シンプルに言うと、
発育=体が大きくなる(量)
発達=体の機能が高くなる(質)
 
つまり、体が大きい(ガタイのある)ジュニアは
「発育がいい」となります。
 
一方で、体の大きさは並ですが、すごく洗礼された
動きやいい体力を持つジュニアは
「発達がいい」となります。
 
 
この二つはイコールではありません。
 
これは、今は言葉あそびですが
後になって重要になってきます。
 
 
 
少し話は変わって、スキャモンの発育曲線
というものがあります。
日本では有名なので、知ってる方も
多いのではないでしょうか。
 
img_sec2_01.gif
↑こんなやつです。
横軸は年齢、縦軸は発育の割合を示しています。
よく言われる「ゴールデンエイジ理論」は
この曲線が根拠の一つになっています。
※あと二つ、神経の可塑性と即座の習得という
要素がありますが、それはまたの機会に。
 
 
ゴールデンエイジ理論は有名ですが
かいつまんで言うと、9~12歳前後は神経系が
発達しやすいので、この時期にスポーツすれば
上手くなる!!
みたいなやつです。
(かなりシンプルに言ってます。ちなみに
この理論は近年否定的ですが、後述します)
 
 
 
上の曲線を見ると、確かに神経系は12歳くらいで
100%に近くなります。
なので、一見スキャモンの曲線や、
それが元になったゴールデンエイジ理論は
素晴らしく思えるかもしれません。
 
しかし、ここでさっきの
「発育」と「発達」の話が出てきます。
スキャモンの曲線というのは、正しくは
【スキャモンの「発育」曲線】と言います。
 
 
発育です。体の大きさです。
 
この曲線はもともと、スキャモンっていう方が
いろんな年齢の人を解剖して、それぞれの臓器の
重さを図りで測るという方法で調べました。
 
つまり、上の図のグラフは「量」であって
それを上手く使えるか(=質的な発達)とは別の話です。
 
これが、近年のゴールデンエイジ理論が
否定的に見られている理由の一つです。
 
 
 
 
じゃあ、ゴールデンエイジ理論は間違ってんのか?
幼少期に練習しても上手くならんと?
って思うかもしれませんが、そうでもありません。
 
実際に神経系は量も質も13歳ぐらいまでに
80%は出来上がると言われますし
(これを神経の可塑性といいます)、
現場で見ててもこの時期が一番上手くなると
実感しています。
 
 
話を戻します。
もう一度、スキャモンの表を見てみましょう↓
スクリーンショット 2017-12-05 12.46.47.png
↑線が増えて見にくいですが、印をつけてみました。
黒点線の6~12歳の成長期までは、神経系が
もっとも発育する時期(黒○)。
 
赤の点線は一般型(筋骨格や心臓、呼吸器系)が
発育する時期(赤○)で、これは成長期の時期に
相当する、という感じです。
 
 
 
そして下は、JTA(日本テニス協会)から出てる
ジュニアのトレーニングに関する推奨の順序です↓
 
スクリーンショット 2017-12-05 12.54.03.png
下の方を抜粋すると、
発育・発達の速度は個人差が大きく、上の年齢区分はあくまでも目安となる。発育・発達期特に男子の13歳前後、女子の11歳前後のトレーニングはPHV(Peak Height Velocity of Age):身長が最も伸びる時期(年齢)を中心に考えることが望ましい。
  • PHV 以前:神経系のトレーニング
  • PHV 時期:呼吸循環系のトレーニング 
  • PHV以後:パワー系のトレーニング
 
(資料を見たい方はこちらをクリック
JTAのホームページ資料に飛びます)
 
 
 
つまり、成長期まではやっぱり神経系
(思うがままに体をコントロールする能力)
鍛え、成長期の時期は心肺機能を高め、
成長期以降は体がしっかりしてくるので
パワー強化系をやっていきましょう。
という内容で、
JTAが推奨している内容と
スキャモンの曲線を解釈したゴールデンエイジ理論で推奨している内容は大体同じです。
 
 
ちなみに僕も現場レベルですが、
これらの順序は間違っていないと感じています。
 
 
 
 

そしてここからが、今日一番共有したいところです。

 
JTAの資料では
「あくまで発育発達は個人差があるから、
本人の成長ピーク(PHV)時期に合わせて
トレーニングを変えましょう」
という見解です。
 
つまり、スキャモンの曲線を鵜呑みにして
12歳までは神経系!!13歳からは心肺系!!
みたいに分けるんじゃなく、
「一人一人の成長速度を見極めて、トレーニング内容を変える時期は個別対応していくことが大切」
ということです。
 
 
以下、まとめ↓
 
①スキャモンの曲線は発育(量)の話なので、この図を鵜呑みにして機械的にトレーニングしてはいけない
 
②しかし、ゴールデンエイジ理論の考え方自体は間違っていない。大切なのは選手一人一人の成長を見極めてトレーニングを進めること
 
③成長を見極めて対応するには、「個別対応」が必要ということ
 
 
 
じゃあ、どうやって成長を見極めるんや!!
って話は、長くなったので次回しますね。
 
 
 
次回/PHVとは。一人一人の成長を見極める
 

 

2018.4.24 追記

※このシリーズの記事は、以下から全て見ることができます。
まだシリーズ過去の記事を読んでいない方は先に過去記事を見てください。
最終章も追加しました。
 
  1. 成長による不調と対策
  2. 共有したい知識①〜成長期をしる〜
  3. 共有したい知識②〜一人ひとりの成長を見極める〜
  4. 事例①成長が遅いケース
  5. 事例②成長が早いケース
  6. 事例③成長期を襲う不調『クラムジー』
  7. 事例④ジュニア女子の体の変化と不調
  8. 最終章:ストレス、プレッシャーと体の不調
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