あるトレーナー仲間が言ってた言葉で、
『最後まで選手の理解者であれ』
というのがずっと頭に残ってる。
コーチと選手は時に言い争いするしそうであってしかるべきと思うけど、トレーナーは彼らを繋ぐ橋渡し的な役割もある。世界的に活躍してるトレーナーはみんな、ここが素晴らしいと思うんです。
— 西川 匠 (@physio_tennis) 2019年1月26日
どうも、西川です。
今日は結構固い話ですが、競技スポーツに関わるトレーナーの役割についてです。
結論を先に言うと、トレーナーの最大の役割というか仕事は、冒頭のツイートの通り
「指導者と選手の橋渡し」
だと思うんですよね。
そりゃ、トレーナーのやるべき仕事や必要なスキルは多岐に渡りますが。
けど、競技スポーツで関わる以上、個人スポーツであってもチームであり、またチームは生き物であるので、自分(トレーナー)のスキルだけでチーム全体がよくなることはあり得ません。
やはり僕の中では、『選手を中心として、関わる人間の総力戦』というのが一番ベターな表現だと思っています。
↑こういう感じです。アスリートを中心に、コーチや医師、エージェントなんかもスタッフそれぞれが総力することでチームの成果が出る、という図。トレーナーはこの中の一つ。
で、やっぱりその中でもコーチというのは特別で、ある意味選手に道を示す存在であるし、一番その競技のことを熟知している存在です。
であるがゆえに、時に選手とコーチは衝突します。
これは悪いことではなくあってしかるべきなのですが、この衝突がその後のチームにいい結果をもたらすこともあれば、最悪ケンカ別れとかになってしまう可能性もあります。
なので、ここを上手く取り計らうのがトレーナーの仕事…というのが僕の持論なんですよね。
最新のトレーニング理論を駆使して指導することよりも、
神の手(なんか存在するのか知らんけど)のような治療をするよりも、
この『橋渡し』というのがチームにとって一番の役割だろうと、最近特に海外で仕事をしていて思っています。
と、抽象的な話になってしまったので、最後に具体的なストーリーを交えて終わりたいと思います。
ツイートを貼り付けただけですが、悪しからず笑
競技スポーツに関わるトレーナーの最大の役割は、『選手と指導者のパイプ役になること』だと思う。
数年前、ある選手がコーチとケンカしてる場面に遭遇した。
コーチはその選手にはある戦術が大切でそれを指導しようと試みたが、選手は乗り気でなく、他の方法を教えてもらいたがっていた。(続く)
— 西川 匠 (@physio_tennis) 2019年4月12日
選手が求める戦術に対しコーチは「今はそれでいいかもしれないが、将来さらに苦労することになる」と。しかし選手は「今は将来より今の結果が大事な時期だ」と。
お互いの主張はぶつかりあい、選手は「こんなコーチとやってられるか!!」とコートを後にし、コーチもやれやれと呆れ顔でした。
— 西川 匠 (@physio_tennis) 2019年4月12日
お互い自分の主張を譲らず(僕も双方一理あると思ってて)、そのケンカ以降選手が練習をやりたがらない日が3日も続いた。
僕のトレーニングは受けてくれるけど、それ以外は一切コートに入らずコーチと会わず。さすがに4日経って僕もこのままじゃマズイと思って、選手に胸の内をたずねてみた。— 西川 匠 (@physio_tennis) 2019年4月12日
すると選手は、今までも似たようなことがあり、その度に我慢してたことを語ってくれました。コーチの言うこともわかるが、自分は今結果を残さないとスポンサーに逃げられる、と。そのプレッシャーと闘ってることがどれだけ大変かわかってほしい、というのが今回のケンカの背景にあったのだとか。
— 西川 匠 (@physio_tennis) 2019年4月12日
けど、コーチが自分の見えない遠くまで見据えて指導していることも理解してて、なんやかんやコーチの指導がベストなのも分かっていると。
で、そうした背景があることをコーチに話すと、「俺も〇〇が目の前に必死なのは分かってる。だけどコーチが先を見ず目の前のことだけやっててどうすんの」と。
— 西川 匠 (@physio_tennis) 2019年4月12日
これは双方正しく、こうした主張や感情のぶつかり合いはあって然るべきだと僕は思いました。しかし選手はどうしても感情的になってしまうし、コーチも優秀な方は職人気質が多いので、意固地になると収集がつかなくなるんですよね笑
こういう時はお互いのパイプ役が必要で、僕らの出番となるわけです。
— 西川 匠 (@physio_tennis) 2019年4月12日
コーチには「彼の気持ちも汲んであげましょう」と言い、選手には「コーチも必死に考えてるよ。不器用だけど」となだめ。
僕の言葉はなんの解決にもなってませんが (笑)、この時必要だったのは「正しい方法」ではなく「気持ちが歩み寄れるキッカケ」だと僕は感じ、こうした役目を買って出ました。
— 西川 匠 (@physio_tennis) 2019年4月12日
で、これが功を奏したのかはわかりませんが、翌日から選手は嫌な顔しながらも練習に出てくれ、コーチも練習の意図をやや丁寧に説明するようになり(笑)、徐々にお互いの仲は戻っていきました。
些細なことにも思えますが、こうした積み重ねがチームの空気を形作り、結果を変えていくのを見てきました。
— 西川 匠 (@physio_tennis) 2019年4月12日
この後も、選手は悪くない成果を出すことができ、コーチともいい関係で続いていました。
この経験から僕が思うのは、トレーナーの本当の役割はこうした『気持ちのパイプ役になること』で、最先端のトレーニングを指導することでも、神の手のような治療をすることでもないと思っています。
— 西川 匠 (@physio_tennis) 2019年4月12日
僕がいつも言っている「コーチはトレーナーにはなれない。その反対もしかり」というのは、こうした意味合いもあるんです。
コーチは選手の1日先と5年,10年先の両方を見据えて指導するので、主張は激しくなってしまうし、時に選手と口論やケンカすることもあります。
— 西川 匠 (@physio_tennis) 2019年4月12日
一方で、選手とコーチが「ごちゃった時」、トレーナーはパイプになる必要があるので、競技の方向性に関して主張の激しい立場であってはならないわけです。
体のことに関しては選手と言い合うことはありますが、チーム全体として見た場合、トレーナーは『パイプ、潤滑油』といった存在であるべきで。
— 西川 匠 (@physio_tennis) 2019年4月12日
そして僕がこれに気がついてからは、「絶対にコーチから『雇われる』のは避けよう」と考えるようになりました。
コーチと気持ちの面で上下関係になることがあるからです。本来雇われだから立場が下なんてことはありませんが、コーチ側が上下関係を意識してしまうとパイプ役は難しいからです。
— 西川 匠 (@physio_tennis) 2019年4月12日
「雇い」「雇われ」の関係では、少なからず上下関係が出てしまいます。
しかし、例えばお互いが現場から業務委託を受けている関係ならば、お互い対等なのでパイプ役になりやすい。トレーナーはスポーツ現場で働くなら、コーチや選手と対等な立場でなくちゃ良いチームにはならないというのが持論です。— 西川 匠 (@physio_tennis) 2019年4月12日
ちょい長くなりましたね。
トレーナーやスポーツ現場に関わる方の、何かの参考になれば幸いです!あ、でもトレーナーも息抜きしましょうね。
選手とコーチの間に立つことでボロカスになって潰れては意味ないですから笑
自分の心のキャパとも相談しつつ仕事するのがオススメです。— 西川 匠 (@physio_tennis) 2019年4月12日
おしまい。