西川です。

今回は、スポーツを仕事にしたい!というテキスト購入者さんから日々受ける、質問や悩みに回答していこうと思います。

私は普段、個人としてはトレーナーとして主にテニス選手のサポート(最近は遠征帯同がメイン)を、所有する法人としてはスポーツ関連事業を行っていますが、テキスト購入者をはじめ駆け出しの方やこれからスポーツ分野で仕事をしていくんだ!というトレーナーやセラピストから、沢山相談を受けます。

  • 病院で働きながらトレーナー活動をしたいんですが、勤務先が副業禁止の場合どうすれば良いでしょうか?
  • これから副業をしたいのですが、税金のことが心配です
  • 最初からお金をもらって活動することに抵抗があります。ボランティアから始めるべきですか?
    …etc

これらは一例ですが、多くの人が比較的似た質問をされたり、似た悩みを持っているんだな〜と感じることが多くて

なので、これはぜひ「スポーツを仕事にするテキスト」で共有しようと思い、筆を取りました。内容的に動画よりもテキスト媒体の方が良いと思ったので、今回は記事でお届けします。

テキスト内なので、僕も忖度せず本音で回答しています。特にこれから副業あるいは本業として活動したいと思っている方には参考になると思いますので、ぜひご覧ください

Q1. 病院で働きながらトレーナー活動をしたいんですが、勤務先が副業禁止の場合どうすれば良いでしょうか?

A. 大きく4つの方法があると思います。

  1. 収益が発生しない範囲で活動する
  2. 副業禁止の詳細に法的妥当性がない場合、勤務先と交渉する
  3. 法人を立て、外部の仕事は全て法人で請け負う
  4. 副業OKの職場に転職する

1.収益が発生しない範囲で活動する

そもそもの話として、「副業」という言葉の定義は非常に曖昧なのが現状です。

なので当然、「副業禁止」という言葉の定義も職場によって異なることが多いのですが、多くの場合は「業務外の時間を使って何かの外部活動をすることがダメ」というよりも、「業務外の外部活動で収益を得ることがダメ」というケースが大半だと思います。

※例外として、例えばスポーツ分野に力を入れている医療機関などであれば、トレーナー活動をする際に医療機関の名前を出して欲しくないという理由で、外部活動すること自体を副業とみなし禁止・制限している場合もあります。

この「業務外の外部活動で収益を得ることがダメ」なのであれば、単純な話収益が発生しないように活動すれば良いわけです。

ボランティアとして活動したり、交通費相当や必要経費分のみを支給していただくなどであれば、「収益が発生している状態」にはなりませんからね。

ただし前提として、あなたの職場にとっての副業の定義は何なのか、どこまでが副業禁止の対象になるのかは、就業規則に明記されているはずなので、しっかり確認しておきましょう。

早い話、就業規則で書かれていないことを禁止と言われる筋合いは全くないですからね。(これについては次の項で詳しく述べます)

ちなみに、何をもって収益が発生しているとみなすか?ですが、これは確定申告の義務が発生する、年間所得20万円が妥当なラインとみなされる場合が多いです。

労働収入とは別に個人的な活動で所得を得ている場合、年間20万円以上の営業利益が出ていれば確定申告が必要になります。が、これは必要経費をのぞいて考えることになります。例えば、

  • トレーナー活動で、現場から月に2万円のフィーをいただいている
  • トレーナー活動のために必要な交通費や諸費用は、月に15,000円かかる

上記のような状態であれば、単純計算すると営業利益は20,000円-15,000円=5,000円/月となり、年間の利益は5,000円×12ヶ月で60,000円になりますよね。

この場合、年間20万円の利益には届いていないので、確定申告の義務は発生しません。もちろん、このようなケースで確定申告をしない場合、かかった経費といただいた収入は全て記帳しておき、領収書や銀行口座の入出金、クレジットカードの控えなどは全て残しておく必要はありますが。

↑こんな感じで月毎に管理するのが良いでしょう。収益が20万円を超えそうならクラウド会計のサービスなどを使った方がいいですが、年間20万円未満ならこの程度で良いかと。

※ただし公務員の場合、基本的に金銭の授受を伴う外部活動が副業とみなされ、それが国家公務員法で禁止されています。この場合は必要経費を含め、全て実費負担で活動するしかないのが実情です。
尚、公務員の副業は規制緩和の方向で変わりつつあるので、職場や自治体の許可を取れば副業できる可能性もあります。また動きがあれば最新情報をアップしようと思います。

話を戻すと、、まず副業禁止の定義がどこまでなのかを職場に確認しましょう。外部活動そのものが禁止なのか、収益の発生がNGなのか。窓口の人の意見ではなく就業規則の文言と照らし合わせて聞いてみることが大切です。

その上で、収益が発生しない範囲でなら動いても良いのであれば、上記のように金銭管理をしつつ活動する、というのが一つ目の方法になります。

2.副業禁止の詳細に法的妥当性がない場合、勤務先と交渉する

先の項でも書きましたが、どの職場にも就業規則というものが存在します。

この就業規則は勤務職場の中におけるルールなので、原則的には守らなければいけないけません。ですが、就業規則の内容が法的に妥当でない場合、書かれている内容自体が無効とみなされることがあります。

大前提としてあまり知られていませんが、法的な側面だけで考えると企業が社員に対して副業を禁止することは基本的にできない(公務員を除く)のが現状です。

ですが現状は、企業が副業を禁止しているケースがまだまだ多いですよね。それはこの記事にもあるように、副業によって職場の情報漏洩の危険があったり、所属企業の名前を無断で使われて活動される可能性があるからです

このような理由で副業禁止をしている場合、その言い分には合理性があるので従わなければいけません。が、裏を返すと、それらの合理的な理由がない場合、企業は副業を禁止することができないというのが基本的な法律のスタンスとも言えます。

なので、もしあなたが副業をしたいと考えていて、就業規則に副業禁止が盛り込まれている場合、本当にその内容に法的な妥当性があるのかどうか、またその就業規則の内容に触れない範囲で副業することができないかを勤務先と交渉するのも一つの手だと思います。

一つ例を挙げると、私の知人は副業禁止の職場でしたが、職場側が懸念する「会社情報の漏洩」「守秘義務の違反」などを犯さないという念書を書くことで職場から副業のOKをもらい、活動していました

職場とあなたはあくまで対等な関係ですから、変に遠慮する必要はないと思います。


3.法人を立て、外部の仕事は全て法人で請け負

あまり褒められたことではないですが、どうしても副業禁止だけど副業したい!という場合、法人を立ち上げそこで仕事を請けるというスキームもあります。

ただしこれは合法ですがグレーでもあるので、手放しでオススメできる方法ではありません。あくまで一手段として、また行う際は自己責任でお願いします。

このスキームを理解するには、法人というものの仕組みを理解する必要があります。「なんで法人を立てたら副業OKになるの?」という疑問が当然浮かぶと思いますからね。

ものすごく簡単に説明すると、法人を作る≒架空の人間を一人作り出すことになります。

法人(ほうじん、: juristische Person、: personne morale、: juridical person)とは、自然人以外で、法律によって「」とされているものをいう。ここでいう「人」とは、権利義務の主体となることができる資格権利能力)を認められたものをいう。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

上記のように、法人は法律上「人」とみなされます。

もちろん、私たち人間(法律的には「自然人」と言います)のように姿形があって、ご飯を食べたりうんこしたりってことはありません…が、自然人と同じように権利を所有する人とみなされます。

つまり、あなたが一人で法人を立ち上げるということは、あなたとは全く別の人間をもう一人生み出すということになります。

その上で、「書面上だけで存在する別人」は、あなたが支配権を持っているという、なんとも不思議な状況になります。

で、本題です。

察しが良い方は気がついたかもですが、あなたが立ち上げた法人の名義で仕事を行い、報酬も法人名義で受け取ることが本スキームになります。

法人で行う仕事に関しては、あなた個人とは別人格になります。「あなたが副業を行なっているわけではない」という理屈になるわけですね。

なお、このスキームを使うには以下の点に注意することをお勧めします。

  1. 法人設立には資金が必要(合同会社なら最低6万円程度、株式会社なら24万円程度)
  2. ランニングコストも必要(最低で年間数十万円)
  3. 就業規則で「副業としての法人設立は禁止」などの項目がないことを確認する
  4. きちんと法人の銀行口座を開設し、仕事の報酬は法人口座にプールする
  5. 法人からあなた個人への役員報酬は0円に設定する
  6. 公務員の場合、営利企業の役員に就任することは禁止されているため、家族など第三者を役員に据える、あるいはNPOなど非営利の法人を立ち上げる

副業では法人設立はさまざまな制限や注意点があるので、もし活用される場合はご自身でよく調べることをお勧めします。

ちなみにここまで読んで「複雑で難しい…」と感じた方は、この方法はやめておいた方がいいと思います笑

4.副業OKの職場に転職する

どうしても今すぐ副業したい!というわけじゃないなら、これが一番良い気がします笑

世間は副業解禁の流れで動いているため、数年後にはあなたの職場も副業OKになっている可能性はあるでしょう。しかし、それを座して待っていられるほど、人生は長くありません。

思い立ったが吉日と言いますし、絶好のチャンスは待ってても絶対にきません。自分で動いて環境を掴み取るしかないんです。

もし上記1〜3のスキームが自分には向いていない…と感じたら、速やかに副業OKの職場を探して転職することをお勧めします。

後編に続きます!

Q1でかなりのボリュームになってしまったので、残りは後半に書いていこうと思います。

後編のアジェンダは以下の通りです↓

Q2. これから副業をしたいのですが、税金のことが心配です。
Q3. 最初からお金をもらって活動することに抵抗があります。ボランティアから始めるべきですか?
Q4. 病院で働きながら、トレーナーとして副業的に活動できれば良いと思っていますが、甘いですか?
Q5. 将来、地元に戻って治療院(orジム)を開業したいです。今のうちから準備すべきことはありますか?
Q6. 人口減少や円安などの影響で、日本市場がこれから衰退することになりそうで、将来が不安です。今後数十年で、トレーナーや店舗運営は厳しくなると思いますか?
Q7. 将来、トレーナーとして海外で活動したいと思っています。全くツテはない現状ですが、何から始めれば良いでしょうか?

後編もお楽しみに!!