養成校時代

さて、ここからが本題です。

無事、専門学校に入学したのですが、入学して早々ある先生から、

「スポーツをやりたくてPTを目指すヤツは多いけど、いきなりそんなん目指しても無理やからな!」と言われたんですよね笑
※これ、PT学生あるあるではないでしょうか笑

先生の本意はわかりませんが、僕は「時代は高齢化社会にニーズが向かっている。それに、一般の人の体を見れないようじゃ、スポーツ選手の体は見れない」と解釈しました。

(実際はそうでもないです。一般の人もスポーツの人も、それぞれ違った難しさがあります。どちらが優劣とかもありません)

学校の先生はもちろん、周りの友達も死ぬほどスポーツがやりたい!!という人はいなかったので、僕も公に夢を語ることは当時ありませんでした。

でも、いざ就職するときになって、「スポーツがやりたい!!」と仮に先生に相談したとして、

「お前学校の授業もちゃんと受けてへんのに、何好き勝手いうとるんじゃ!!」と言われたくなかったので、在学中はスポーツという言葉は胸の中に秘めたまま、純粋に勉強に打ち込むと決めました。

そして、好き勝手言っても許される成績を残して、誰も文句を言えない状況を作ってから、改めて「スポーツがやりたい」と言ってやろうと心に決めたんですね。

実際、在学中の3年間は、僕の人生の中で最もスポーツから遠ざかった生活を送っていました。

今までと全く違った世界にどっぷり浸かることで、テニスという世界を客観的に見れたのも良かったといえば良かったかもしれません。

入学後に、話を戻します。

さすが3年制の専門学校だけあり、4月からいきなり解剖学や生理学など専門科目の勉強が始まりました(4年制大学の多くは、1回生の間は専門科目が少ないはず)。

ですが、僕はビジョンこそあやふやだったものの、「絶対にこの分野では突き抜けてやる!!少なくても、この学校同級生には誰にも負けねーぞ!」というつもりだったので(若かったので血気盛んでした。勝ち負けとかじゃないのにね笑)、全ての科目を人生で初めて本気で勉強しました。

具体的には解剖学、生理学、運動学を中心に、基本的にその日にやったことの予習と、翌日やったことの復習、そして週末はそれらのおさらい。ざっと羅列すると、

  • 解剖学→自宅にちっさい骨模型を購入しておいておき、ランドマークや起始停止を友達と一緒に確認
  • 筋肉の支配神経など→単語帳にメモし、移動時間に確認(これはパーフェクトを目指す)
  • 生理学→毎回授業の内容をノートにおさらい(生理学は何かとイラスト化した方がいいので)
  • 運動学→関節の動きや姿勢の変化に伴う重心位置などは、骨模型を見ながら確認
  • 基本的な医学英語→単語帳に書いて覚える

こうしたやり方を中心に、平日は基本的に一日3~4時間は授業以外に学習しました

これらは一年生の時に取り組んだ内容ですが、この結果解剖学・生理学・運動学は学内のテストで90点を下回ることはなく、基本的に同期の中では常にトップ3までの位置にいたと思います。

これは今思うと、本当によく勉強したなと感心します笑

一方で筋肉や関節運動を触診したり、各組織のつながりなどを立体的に見る練習は授業以外にはあまりやりませんでした。

時間が限界だったのもありますが、これはそのうちできるだろうと考えていたからです。

結果的に、2年生以降の授業や臨床実習を通して、この部分はしっかりと実技として学べたので、これはこれでよかったと思います。

座学の内容をしっかりと頭に入れておくこと。

学生のうちは、勉強しすぎてもしすぎることはありません。頭でっかちになっても構いません。

どうせその頭でっかちは、実習やその先の現場で直されていきます。その知識をベースに、高学年や実習の時に触診や実技の練習をすることが大事だと僕は考えています。

余談ですが、この時も医療英語の授業はありましたが、正直逃げていました。

英語なんかいらんやろと思ってたからです。

これは唯一、在学中を振り返って自分をぶん殴りたくなる失敗です。

死ぬ思いで英語をやっとけばよかった。。

しつこいようですが、スポーツの世界はグローバル化がどんどん進んでいます。

僕は海外の仕事が増えてきた2017年以降から英語に取り組み出したので何とかなっていますが、今の仕事があるのはこの時期から英語を勉強したことが大きいです。

これを読んでいるみなさんは、マジで早く英語をやっておくことをお勧めします。

具体的な別分野になるので割愛しますが、まず最初の段階では英単語を「音」として覚えるのがオススメです。

なぜなら、リスニングもスピーキングも、単語を知らない、聞き取れないなら何も始まらないからです。

僕はDUOという教材を買って、その単語を一つ一つ覚えていきました。

4時間/週の勉強で、3ヶ月ほどで全て終えることができます。

あ、ちなみに、PTのいろんな意味での現状を知って(しまった)のも、ちょうどこの頃になります。

  • PTとは医師の指示のもとで行う仕事である
  • 普通、卒業したらみんなPTとして病院で働く
  • スポーツトレーナーとPTというのは別の仕事
  • 現状、僕がやりたかった「テニス選手の体を見る仕事」はPTとして確率されていない
  • というか、PTとしては開業権はない

など。

「あ、道間違えたな」って一瞬思いました笑

しかし、高校時代の彼女が言うには、スポーツの仕事もなくはないみたいだし、まあなんとかなるっしょ。みたいな軽い気持ちでしたが。

(余談ですが、この時点でもうその彼女とは別れてました笑)

さて、基礎的な授業が2年生の前期に終わると、後期からは応用的な授業に入りました。

僕が通っていた養成校は大まかに前期/後期制で、

  • 2年生の前期までで、授業は一通り詰め込む
  • 2年生の冬~3週間の評価実習を2回(12月と2月だったかと)
  • 3年生の春~夏にかけ、8週間の臨床実習を2回(4~5月と6~7月)
  • 夏休みを少し挟み、8月の後半から国家試験の勉強と就活

こんなカリキュラムでした。

つまり、養成校生活の後半は実習、実習、実習の嵐です。

現役PTの方はわかると思いますが、まぁ楽ではないですよね笑

しかし、知識というか、養成校前半でしっかり勉強しておいたのは本当に良かったと思いました。

頭でっかちになった部分もありましたが、実習を重ねるにつれ「勉強してたことと実際はこんなに違うのか!!」という発見がたくさんあり、現場用に本当に使える知識としてアップデートすることができたからです。

PTは実習が大変ですが、個人的に将来早くスポーツ現場で活躍したいなら、この実習期間でしっかり腕を磨くことをオススメしたいです。

学生のうちはどうしても現場で経験を積む機会が少ないので、実習の合計半年という期間は非常に貴重だからです。

まぁそりゃ、色々としんどいこともありますが笑、今の苦しさに負けず、できるだけ将来につながる技術や考え方を磨くのが大切かと。

具体的に僕が実習中意識したのは、

  • 患者さんのことでPTとディスカッションするときは、今の自分が知っている知識とその中で考えられることを伝える→実際に必要な評価プロセスを教えてもらえるので、自分の中で誤差修正ができる
  • PTの触診の仕方やポジショニング(ストレッチのときどの場所に立って、どこに手を置いて…など)をマネする
  • 触診のコツややり方は妥協せずにわかるまで教えてもらう

といった感じです。

特に触診系は、学生のうちは精度が低くて当たり前です。実習でこの能力を身につけておくと、その後すぐにスポーツ現場に出たとしても役に立ちます。

これに関しては、いくら教科書を読み漁ってもできるようになりませんから、PTから直接教えてもらうのが一番ですね!

あ、レポートや症例発表とかは、消耗しない程度に頑張れば良いと思います。

これらがスポーツの仕事で役に立った試しはありませんのでw

さて、そんなこんなで評価実習が終わり、3年生になったときのこと。

時系列としては、これから8週間の長期実習二つ控えていたのですが、このタイミングで僕は、学校のある先生に、個人的にスポーツに関する相談をしました。

「将来、スポーツをやりたいんです。最終的にはテニスに関わりたいのですが、誰かそうした活動をしている先生をご存知ですか?」と。

すると先生はスポーツ関連の情報を集めてくれ、「テニスは無理だったけど、水泳のトレーナーをしているPTの先生がいたよ」と紹介してくれました。

名前は伏せますが、業界では結構有名で、パラリンピックの帯同もされていた先生でした。

臨床実習の前でしたが、その先生の電話番号も入手したのでひとまず挨拶をしてみると、「臨床実習が終わったら、現場(某大学の水泳部)に見学においで」と言ってくだったんですね。

こうしたやりとりがあり、見学からになりますが、初めてスポーツ現場に出る機会をいただきました。

で、学生の方は気がついたかもしれないんですが、最終学年といえば就活が入ってきますよね。

書いてきた通り、僕はこの時点で自身のスキルアップは惜しみませんでしたが、将来どのようにテニスを仕事にしていくか、そのためにどんな所に就職すれば良いか、など、自分のキャリアアップに関する道筋は、かなりぼんやりしていました

前述のように水泳のアポをいただいたのは良いことですが、それが最終的にテニスの仕事に繋がるとは思えないし…

しかし、この時点では心の片隅で「なんとかなるやろ」と思いつつも、

  • 仕事以外で、外のトレーナー活動を認めてくれる職場
  • トレーナー活動をする物理的時間が確保できる職場

の二つは必須条件だと考えていました。

これらはTwitterなどでも話していますが、今振り返ってもその通りだなと思っています。

僕の持論ですが、スポーツ現場のスキルは病院のスキル(スポーツリハ含む)とは似て非なるものなので、たとえ20年病院で経験を積もうが、スポーツ現場に出ていきなり通用することはありえないんですよね。

だから、本当にスポーツを仕事にしたいのであれば、普段の仕事とスポーツ現場の活動は分けて考える必要があります。

そして験年数の浅いうちから外に出ていくことが重要なのですが、これを認めてくれる職場というのが就職先の最低条件だと僕は考えています。

良い例、ダメな例をまとめると、

  • 学会発表とかで忙しい職場は×
  • 夜遅くまで残って論文読んでる職場も×
  • 大学病院や国公立病院は絶対×(公務員扱いなので、お金をもらってトレーナー活動できない)
  • 休みがはっきりしている職場は○
  • 就業時間以外の行動に関して「ゆるい」職場が○

という感じです。

さすがにここまで学生当時から考えていた訳ではないですが、

  • 仕事以外で、外のトレーナー活動を認めてくれる職場
  • トレーナー活動をする物理的時間が確保できる職場

これに該当するところを、この一年で探そうという考えは持っていました。

そんなこんなで、8週間の臨床実習が始まりました。

実習自体は、まあ楽しく厳しく鍛えていただいたのですが、当時良くしてくださったバイザーの方に「西川くんは将来どうしたいの?」と聞かれて、これまでの経緯と僕の想いを話しました。

すると、「ウチでよければ、科長に聞いてみるよ」と言ってくれたんですね。

そしてリハ科の科長からも、「病院の業務をしっかりやることは前提だけど、業務外の時間を使ってトレーナーするのは大丈夫だよ」と言ってもらえました。

これは非常に、大きな前進でした。

その病院はスポーツ症例は全くありませんでしたが、回復期365のリハ病院で、シフト制なので休みがしっかり決まっていました。

スタッフの方は比較的ストイックな方が多く、病院外の勉強や発表も積極的でしたが、トレーナー活動するのに支障が出るほどではなさそうだったので、結果的にこの病院に就職しました

この選択は、振り返ると間違ってなかったと思っています。

もしここで国公立の病院や、研究に熱心な大学病院に就職していたら、僕の未来は途絶えてしまってたでしょう。

ここで学生の方にお伝えしたいのは、スポーツを見据えて就職するなら「時間を確保できるかどうか」を最優先にすべきということです。

いろんな思いがあるでしょう。

働きやすい雰囲気、治療スキルアップ、他の分野もみてみたい、スポーツリハの病院に憧れていた、、など。

しかし、それらを優先することで「時間」を犠牲にしてしまうなら、絶対にその選択は後悔します。

加えて、現役のPTの方で、スポーツに関わりたいが現時点では国公立の病院に勤めているケース。

これはできるだけ早く、職場を変えることをオススメします

公務員扱いだと、スポーツの仕事が広がったとしても、国家公務員法という法律があるためお金をいただいて活動することができません

僕が一緒仕事をしているPT仲間も、昔は国公立の病院に勤めていましたが、やはりスポーツの活動するにあたり環境整備の一環として職場を変えていました

さて、このような経緯で学生時代を終え、晴れて就職することになったのですが。

こうして書きながら振り返ると分かりますが、僕は学生時代、何一つ具体的なミッションを描いていなかったんですよね。

しかし、就職先のチョイスが功を奏し、のちにスポーツの仕事が広がってきた時も、独立までなんとかやり抜くことができました。

この経験から言えることは、まだこの時点でも、具体的なビジョンは必要ないということ。

しかし同時に、なんとなくは未来を見据えていないと、それにあったチョイス(僕の場合就職先)はできないということです。

後悔があるとすれば、もう少し早くからスポーツ現場に顔を出して、学生の頃から雰囲気に慣れスキルを磨く行動をしておけばよかったと思います。

しっかりと学校の授業に取り組んでいれば、学校の先生に相談することでスポーツの現場はいくらでも紹介してくれるだろうし(当然、見学やボランティアですが)、最近ではこの時期から積極的に動いている学生さんも多いですよね。

素晴らしいことだと思います。

あとは、やっぱり英語ですね笑

「病院勤務時代」に続く、、、