こんにちは、西川です。
このnoteは、スポーツトレーナーとして将来収入源を作っていきたい方や、ゆくゆく独立を考えている方(あるいは、すでに独立されている方も)に向けた記事です。仕事にする前に準備すべきことや、独立後の生活を無理なく、確実にキャリアを積んでいくための原則について書いています。
スポーツトレーナーとして仕事が広がってくると、あなた個人の名前で仕事をしていくことが多くなっていきます。
すると多くの方は、最終的に独立を考えることになるのですが、「雇われと違って安定しないから、自分にもやっていけるだろうか」と、漠然とした不安に襲われるケースは少なくないでしょう。
この不安はある意味当然で、実際守るべき原理原則を無視してしまい、自身の事業を取りやめざるを得なくなるケースもたくさん見てきました。
独立前の準備、そして独立後の「自分会社」の運営には、原理原則というものがあります。挑戦やリスクを取ることは必要ですが、やっていもいい挑戦と、やってはいけない無謀な挑戦があるということです。
今回はその原則と心構えなど、僕の実際の体験談も交えてお話します。
それでは始めます。
「5年生存率20%」をどう捉えるか
起業は、個人だろうと法人だろうと、5年続く確率は20%と言われます。
これは、10人が独立したら、その事業が5年間続く人は2人程度ということになります。
付け加えると、10年生存率は10%、つまり、5年続いたあとはその半分は10年間継続しているという事実があります。
ですので、誰にでもわかることですが「最初の5年が大事」ということですね。
実際僕も、今年で独立して6年目を迎えましたが、最初の数年間を試行錯誤しながらゴ◯ブリのような生命力で乗り切ると、経営戦略的にもメンタル的にも要領がわかってきました。
その要領をつかむまでが大変で、かつここで大きな失敗(後述)をしてしまうと、事業をやめざるを得なくなってしまいます。
ところで、この「5年間続くのは20%」と聞いて、どう感じましたか?
多い?少ない?様々な意見があると思うのですが、僕がこれを初めて聞いた時、率直に感じたのはこうでした。
「5回失敗しても、死なないやり方でいこう」
めちゃ共感。
独立する前『5年以内に80%は潰れるんだよ。失敗するからやめとき』って色んな大人に言われたのを思い出した。
僕はそれを聞いて『80%潰れるんやったら5回チャレンジしたらええやん』って思って突っ走りました。
今年で独立して5年目。あの時大人の意見を無視して良かったと思う。 https://t.co/1wwQbPliqt
— 西川 匠 Takumi Nishikawa (@physio_tennis) August 19, 2018
当時は直感でこう思っただけ(しかも、具体的なアイデアは皆無ww)なのですが、結果論としてこの考えは間違っていなかったと思っています。
どんなに優秀であっても、大小様々な失敗を経験します。失敗しない人なんてまずいないです。
しかし、失敗から立ち上がり、サイヤ人のごとく戦闘力を増していける人と、失敗で再起不能になってしまう人は、ここの思考で差が出てしまいます。
具体例を一つ出すと、あなたがパーソナルジムを開業するとして、テナントを借り、最高級の機材を数百万も払って設置したとします。
ところが、その機材は思ったよりも使う機会がなく、使わないと劣化が激しくなり、ランニングコストがかさんでしまう。数百万も投資しているため、それを回収しようとトレーニングセッションの料金を割高に設定するものの、高価だからなのかお客さんがこない。仕方なく機材を撤去しようにも、特殊機材なので回収するにもかなりのお金がかかってしまう…
こうしたケースは、「再起不能になってしまう失敗」の典型例ですね。
言うまでもなく、このケースは「5回失敗するまでに詰んでしまう挑戦の仕方」なので、やっちゃダメなケースです。
では、その反対、つまり「何度失敗しても立ち上がり、その度に戦闘力を増し、サバイブできる」方法は、どんな原則があるでしょうか?
それが、下記の5つになります。
原則1:初期費用を極限におさえる
独立して事業を始める段階で、まず大事なのがこれです。
できるだけ少ない資金で始め、1円でも多く手元のお金を残しておくこと。
間違っても、何百万・何千万の借り入れ(借金)なんてすべきではありません。
話は変わって一時期、理学療法士の間で「自費整体」の開業が流行りました(およそ5〜7年前)。
法的にどうとかは置いといて、僕の周りにも開業した友人がたくさんいましたが、その後数年が経ち、結果は生き残って事業を展開している人と、苦しい経営を強いられている人(もしくは事業をやめる人)の両極端でした。
そして後者、つまり事業が頓挫してしまった人や、苦しい経営を強いられた人は、みんな例外なく開業資金を多く借り入れしていたんですね。
借り入れ自体が悪いわけではないのですが、そのお金の使い道が問題だったわけです。
彼らがやってしまったお金の使い道は、以下の通りです。
・いきなり大きなテナントを借りる(多額の敷金礼金)
・内装費にお金をかけ、無意味に高価なインテリアにする
・高価な機材を導入する
こうすると、開業当初から繁盛すればいいのですが、そう甘くはありません。
自費整体というのは立地が大事なので、始めてみると隣の駅近くの方が集客効果が高く見込めることが判明したりするわけです。
この場合、既出のように数百万も借り入れしている場合、その借金を返さなければ移転するお金を捻出することもできないので、身動きが取れなくなってしまいます。
一方で資金に余裕がある人は、自分のマーケティング観点での失敗を認め、すぐに隣町にテナントを借り直して機材を運び、移転という形で新しい場所で始めることができます。
「失敗しても死なないようなマネジメント」の1歩目は、できる限り手元の資金をキープして始めることなのです。
では、初期費用をかけない開業方法は、具体的にどんなものか。
僕が実践したことをまとめると、
・事務所は借りず、自宅を事務所に
・ジムは内装にお金をかけない。機材など、総額25~30万に抑える
・トレーニング用具などの物品は、譲り受けるかメルカリなどで安く仕入れる
・移動に必要な車は安い中古車
ざっくり、こんな感じです。
実際、トレーナーが独立して活動する大まかな方法は、
①スポーツ現場などと契約して、現場に出向き仕事をする
②ジムや治療院などを開業する
③1と2の両方
という感じだと思いますが、①の場合だと、必要なものは車くらいでしょう。現場が近隣にある場合、車さえも必要なかったりしますし、マッサージベッドやストレッチポールなどの物品は、安くで仕入れて現場に置いておけばいいですから、初期費用は極限に抑えることが可能なはずです。
(とはいえ、契約先が増えてくると、遠方の現場に出向いたり遠征に行くこともあるので、結局車は必須アイテムになるのですが)
②の場合も、上述の通り内装などにお金をかけずやるべきで、僕のパーソナルジムは総額25~30万ほどで始めることができました。
今日は僕がやってるパーソナルジム「テニスフィジオ」で選手のトレーニングでした。
トレーナー活動するのに、個人的には「現場を拠点とする」が僕の理念なんですが、屋内の拠点はなんだかんだあった方がいいんですよね。そのジムはテニス選手を見る専門のジムとして運営してます^_^ pic.twitter.com/6SR8bBMCei
— 西川 匠 Takumi Nishikawa (@physio_tennis) June 30, 2018
↑僕のジムです。10坪ほどの小さなパーソナルジムですが、1対1で見るならこの広さと設備で十分です。この環境を作るのに、25~30万で可能でした。
(ジムに関しては、詳しく解説すると長くなるので、「パーソナルジム開業ガイド」なる記事で別途解説します)
というわけで、独立すると「よっしゃ、金かけて自分の城作るぞヒャッホー!!」ってしたい気持ちもわからんではないですが、できるだけケチって手元にお金を残しましょう。
ヒャッホーした人はだいたい死んでますからw(笑えないw)
原則2:ランニングコストをできるだけおさえる
原則1の「初期費用を抑える」と少し通ずる話ですが、固定費などの毎月かかるランニングコストも抑えるのが原則です。
これは日常の生活にも言えることですが、固定費がかかりすぎると気持ちに余裕がなくなってしまいますよね。手取り20万で固定費18万とかだと、マジで気持ちが落ち着かなくなるような感じです。
本来、小規模の経営をする場合、手元にしっかり利益を残して、その利益で自己投資や事業投資をしてより仕事が広がるようにすべきです。
ですので、固定費やランニングコストはできるだけ下げて、気持ちとお金の余裕を持っていくことが大切になります。
具体的に、トレーナー活動において本当に必要な固定費は、
・車の維持費(車が必要な場合)
・家賃、光熱費(ジムや治療院を運営している場合)
・通信費
くらいなもんですね。これ以外に毎月固定でお金をかけなければいけないものは、基本ありません。
※広告費は必要だ!と思うかもしれませんが、僕はこれに懐疑的です。最初はお金をかけない戦略から始めるべきと思ってるので。これは後述します。
原則3:できるだけ在庫を持たない
大手のジムに行くと、ほぼ物販も行われていますね。
サプリメントとかプロテインとか。
そういう物販もやりたいという人はやったらいいのですが、とはいえトレーナーとして独立し始めた段階ではあまり物販は効率のいいビジネスではないでしょう。
在庫を持っていると、仕入れるのにお金がかかります。
たくさん仕入れると、たくさんお金がかかります。
そしてその分を回収できて利益を得られるのは、当然ながらそれらを売った後です。
在庫を抱えている間は赤字なので、これをメインの収益とする場合、集客や販売力を強化したりと、本来のトレーナー活動とは別のところに労力を注ぐことになります。
その分、トレーニングや治療などのセッションは、自分がやるぶんには在庫が必要なく、赤字という概念がありません。
在庫をたくさん抱えてしまい、資金ショートし倒産する。
そんな企業や個人はたくさんいますので、気をつけましょう。
ちなみに、物販それ自体はトレーナーのサイドビジネスとしてありだと思っています。トレーナー活動である程度広がりが出てきて、資金的にも余裕が出てきた頃にトライするのがベターかと思います。
自社のプライベートブランドなどを立ち上げることができれば、それ自体がブランディングにもなりますし、収益性も見込めるでしょうから。
原則4:広告費をかけない
ジムや治療院を開業する場合、「広告費をかけ続けなければ新規客はこない」と考えがちです。
広告費とは、HPを作り専門業者を使ってweb上のSEO対策をしたり、PPCやMEOなどにお金をかけることです。
オフラインだと、チラシを巻いたりするのも含まれますね。
実際、治療院経営だと治っても治らなくてもクライアントは来なくなるので、業種的に新規客を集め続ける必要があるのですが、ここで広告費をかけ続けて新規客を集め続ける、という戦略をとってしまうと、火の車状態になりやすいのが現状です。
どういうことかというと、web上で広告をかけると、膨大なお金がかかります。PPC広告(web検索して、一番上に出てくるようにする)だとワンクリックで数百円単位取られますし、一人の新規客を集客するのに(CV)1万~ヘタすると数万円の出費が出たりします。
マーケティングスキルに特化すれば、徐々に一人の新規客にかけるお金は1万を切るくらいにはなるでしょうが……僕個人的には、このマーケティングスキルのみに頼って新規客を集め続けるという戦略自体、独立して最初はやらないほうが無難かなと思っています。
なぜなら、新規の集客に躍起になるほど、関係性が深いあなたのファン(既存客)が離れていくからです。また、広告はかければかけるほど費用が莫大になるので、既出の初期費用や固定費と同じく、費用を回収することに消耗してしまう、というのもあります。
では、どのような戦略を取るべきかというと、webを使うのであれば広告よりも情報発信を重視する、ということです。
例えば、独立する前からTwitterやyoutube、ブログなど無料で使えるSNSで発信を続けて、あなたのファンを増やすこと。
それらは無料ででき、かつジムや治療院などを始める時に、告知するだけで新規客がきてくれる状態を作ることができるので、スタートアップにこれほど適したものはないでしょう。
余談ですが、Twitterで情報発信されている「なぁさん/ストレッチトレーナー」という方がいます。
僕は彼とは面識がないのですが、彼は現代人が抱えそうな肩こり腰痛などに対するストレッチ動画をTwitter上で発信し、アカウント開設1年以内でフォロワーが15万人を超えています。
10月に本も出版するそうですが、15万までいかなくても、彼のように日々クライアントの見込みになる人に対ししっかりと発信し、フォロワーと言う人的資産を獲得しておけば、仮にジムを開いて告知すれば、たくさんのお客さんが来てくれるでしょう。
これには広告費は1円もかかりませんから、明らかに広告費に大量のお金を注ぎ込むよりも、効率・効果両方の面で良いです。
さらに、「新規を集め続ける」というよりも、「一人でも多く既存客にファンになってもらい、継続してもらって満足度を高める」仕組みを作ることにフォーカスしたほうがいいでしょう。
例えば一人治療院の場合、治った後はパーソナルトレーニングに切り替えることで、健康を維持してもらうとかはベターな手法ですね。
こうすることで、既存客との関係性が深まっていくので、広告費をかけなくても収益が継続しますし、ファンはさらなるファンを呼んでくれるので、広告費をかけずとも新規客が増えていきます。
↑広告は1つのプラットフォームから100人集客するという単発的考えですが、既存客のファン化に注力すれば、10人のファン一人一人が10人分の集客をしてくれ、一人のファンも継続してくれます。
来るかどうかもわからない、続くかどうかもわからない机上の新規客に労力やお金を注ぐよりは、通ってくれる既存客にしっかりサービスをし、満足度を最大まで高め、彼ら彼女らの背景にいる人たちにアプローチすることが、長期的に見て最も良い戦略と言えるでしょう。
余談ですが、この考え方はスポーツ現場のトレーナー活動でも同じです。
いろんな現場に顔を出して人脈つくりに励む方をたまに見かけます。それはそれで悪くはないのですが、上記でいう広告をかけている状況と同じなんですよね。
それよりも、良い!と思った一つの現場、一人一人の選手にしっかり成果を残すことで、その人たちの背景にいる現場や選手たちと繋がりが出てきます。
目の前のことを全力でやり、成果を出すことに集中する。
綺麗事に聞こえるかもしれませんが、これが実は個人トレーナーが長く活動していく上で、戦略的にも最も大切かつ効率的でもあるんです。
僕らの仕事の原則は、「大きく始める」のではなくて、「小さく始め、求められる声で大きくなっていく」ですからね。
原則5:人を雇わない
最後の原則は、「人を雇わない」ことです。
固定費の話をした時にあえて書きませんでしたが、人を雇う、つまり人件費というのは固定費に分類され、かつその中で最大の割合をしめるものです。
さらに言えば、ネットが発達したこの時代、人を雇わずともネットの力を使えばレバレッジをかけた仕事はできますし、作業も自分が働かなくてもリモートでやってくれる部分が増えました。
実際、僕がここ5年以上やってきて、人を雇ったことは一度もないですし、雇う必要もありませんでした。個人に外注することはありますが、基本的に現代において「人を雇う」メリットはないかと思っています。
おわりに
今回の記事は、「独立してから軌道に乗るまでの数年間を、どう確実に生き残るか」という視点で書きました。
ですので、あなたの事業が軌道に乗っていき、拡大するにしたがって、この記事の内容は参考にならなくなっていくでしょう。規模が大きくなれば人を雇う必要も出てきますし、広告費もかけなければいけません。新規開拓には、初期費用も必要になるでしょう。
みなさんが今後活躍され、「この記事の言うてることは俺には古いわ!」と思えるようになれば、僕は今回の記事を書いた意味があると思っています。
それでは、また。