こんにちは、西川です。

今回は、皆さんが心の中で気になっているだろう「日本のスポーツ市場」についてお話しします。

普段僕が SNS で発信しているように、あるいはいろんなニュースを見ていて、「なんとなく今の日本は殺伐としてるな」とか「悲壮感が漂ってるな」「なんとなく未来が暗い気がする」という漠然とした不安を抱えている方も多いと思います(いつも煽ってすんません!だってホントのことだから!)

実際、僕もいくつかの海外の現場で働いてきて、今の多くの日本では(特に若者は)日々余裕のない生活を強いられているケースも少なくなく、海外特に今発展しているアジア近辺と比較すると、エネルギーの違いを肌で感じています。

しかし、皆さんの中では、こうした現状を受け入れつつも、こう持っている方も少なくないでしょう。

「これからも、あくまで日本に住みながら日本のスポーツを仕事にしたい」

この気持ちは僕もよく理解できますし、 実際課題だらけであるとはいっても、 日本には日本にしかない良さというものがたくさんあるのも事実です。

しかし、良い面も悪い面も向き合っていかなければ、今後の日本の市場で生き残っていくのは難しいだろうというのは想像に難くないでしょう。

キレイゴトばかり追いかけていても、飯を食っていくことなんぞできやしないんです。

今回は、僕自身が考える日本のスポーツ市場で生き残っていくための必須条件やアイデア戦略などをお話ししようと思います。

それでは始めます。

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■日本スポーツ市場の動向

まず今の日本がどういった状況になっていて、これからどうなっていくか、それがスポーツ市場にどんな影響を与えるかをおさらいしておきます。

これは「10年後の理学療法士業界の変化と、個人が準備すべきこと」のnoteで詳しくまとめていますので、そちらも一緒にご覧いただければと思います。

①人口減少

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これはスポーツに限ったことではないですが、あらゆる産業で日本はそのマーケット自体が年々減少傾向にあります。

「10年後の理学療法士業界の変化と、個人が準備すべきこと」の記事でもまとめていますが、その大きな要因は人口減少に伴うもので、今後は年間で平均40万人の人口が減ると言われています

特に少子高齢化の流れが加速しているのは間違いなく、平均40万人の人口が減っていく中で、人口比率は高齢者が多く若年層が少ないと言うバランスに突入しています

皆さんおそらくトレーナー活動していて、「トレーナーは数少ない現場を奪い合う椅子取りゲームのようなもの」 という感覚を感じているのではないでしょうか?

これは、現代における日本人の若年層の割合が少ないことも原因の一つであ流のですが、これが今後加速するとなるとより一層、この「椅子取りゲーム」も過激化してくるのは間違いないでしょう。

多くの組織や団体(PT協会なども含め)、あるいは個人が、「今後はより専門特化した人材(差別化)が重要になってくる」と言っていますが、これは僕の見解では半分正しく半分間違いかなと思っています。

というのは、 例えば中高生を相手にするような若年層スポーツ市場のマーケットは年々縮小傾向にあり、現状でもかなりニッチと言わざるを得ません。

その中で、さらに専門特化させ差別化するとなると、 例えば僕のようにテニス選手専門で行うなどになりますが、ぶっちゃけるとこれなら確かにイス取りゲームで勝てる可能性は高くなりますが、あまりにマーケットが小さいため、一つの現場と契約するなど従来のリアル型ビジネスで生計を立てていくというのは、ほぼ不可能に近いでしょう

特に中学生や高校生をターゲットとした場合、サポートの対価として得られるお金は、それぞれの家庭や学校から支払われることになります。

が、現状をこれだけで生活を賄えるだけの資金を獲得し続けるのは、正直僕でも難しいです。

一方でトレーナーの数そのものは、 有資格者が増えるほど増えていくので、差別化や専門特化というやり方が必要なのも間違いではありません。

これらを踏まえると(詳しくは後述しますが)、従来の働き方なら人口の多い地域で拠点を構え椅子取りゲームに勝利する、あるいはオンラインでの発信も併用して日本全国世界各地の若年層をターゲットにするという方法であれば活路は見えてくるでしょう。

②少子高齢化

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先の話に続きますが、 若年層のマーケットは低下していく一方で、 少子高齢化の影響で高齢者のマーケットは今後数十年に向かって増え続けるでしょう。

私はテニス専門で活動しているため、テニススクールのコーチとよく話をする機会があります。

彼らが口を揃えて言っているのは、「テニススクールに今通っている人の多くは中高年以上の世代であり、彼らは単にテニスが好きという場合も多いが、同時に健康増進や維持もしくは病気の予防という健康の手段としてテニスをしている人も多い」 ということです。

実際、とあるテニススクールでは、テニスコートのすぐ近くにプレハブを設置し、テニスのレッスンを半分の時間にする代わりに、 残りの半分プレハブ内でみんなでできるフィットネスをするという形態に変えたところ、これが非常に大当たりし、人気が出ています。

これは私たちトレーナーも大いに見習うべきところであり、 実際中高年の方達は「お金よりも健康が大事。健康のためならお金を払う」と言います。

彼らにとってのスポーツとは、その健康の一手段であるため、こうした場所を狙うのであれば、日本全国どこでどんな手段をとったとしても生き残れる可能性は高いでしょう。

若年層と違い、大都市に拠点を構える必要もなく(むしろ地方であればあるほど中高年の比率は高まり競合も少なくなるので、地域密着型のサービスを提供することが出来る)、若年層を狙った競技スポーツの市場に比べて圧倒的に失敗のリスクは低くなります。

高齢者の主な悩みは「健康」「孤独」「生きがい」「余暇の充実」などですから、スポーツという手段によってこれらの悩みを解決することができ、非常に相性が良いです。

例えば、高齢者向けにトレーニングセッション(需要の面から、パーソナルよりも数人のグループセッションの方がウケがいい)を提供したり、介護予防の一環として、スポーツをするコミュニティを運営することができれば、もっとも現実的に仕事になるはずです。

③外国人の増加

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「10年後の理学療法士業界の変化と、個人が準備すべきこと」でも紹介した通り、外国人が年々増えていくのも確実に起きる未来の一つです。

そこで、日本に中長期に滞在する外国人に向けて、トレーニングセッションなどのサービスを提供できるのは需要が大きいでしょう。

当然、英語や中国語などの語学スキルは必要ですが、マーケット自体はまだ成熟しておらず、今後伸びも期待できます。

今後、外国人の数は、最大で年間25万人以上増えると予想されています。

彼らが抱える悩みは「日本語が話せない」「日本人だけのコミュニティに入りづらい」というものであり、これが例えばコナミなどの大手のフィットネスセンターなどで、 マンツーマンのサービスを受けづらいということにも直結しています。

一方で、日本人のトレーナーも英語を話すことができないことが多いので、日本国内で外国人需要に応えられるケースが少ないのが現状です 。

パーソナルトレーニングそのものの市場は、今非常に盛り上がっています。が、 裏を返すと参入している人の数が多いともいえます。

彼らの中には今後、外国人需要に対してターゲティングしていく人も増えていくでしょうし、そのために必要な能力は英語力くらいなので、参入障壁も低くはないもののものすごく高いわけでもなく、緩やかに増えていくだろうと予想しています。

高齢者需要に応えるサービスが増えていくだろうと予想しているように、これが外国人の需要を満たすようなサービスもこれからどんどん増えてくるでしょう。

いずれにしても、動くなら早めがいいですね。

■日本のスポーツ市場で仕事をしていくための必須条件

さて、これらの現状を踏まえて、本来なら手っ取り早く確実なのは海外に仕事を広げるということなのですが、それでもなお日本に拠点を置き日本国内でサービス展開をしたいという人も多いでしょう。

この場合、どういった戦略で取り組むのがいいでしょうか。

現時点で僕が考える、必須である条件をいくつかピックアップしてみます。

必須条件①オンラインを活用する

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オンラインのパーソナルトレーニングセッションなどは、今後増えていくでしょうし、トレーナーにとって新たな主戦場となっていくでしょう(「5G時代にトレーナーが取るべき戦略」で詳しく解説しています)。

つまり、これはアイデアというよりも必須条件になります。

現状でも、例えば東京にいながら海外の主要都市にすむ日本人駐在員向けにセッションを提供することはすでに可能ですし、5Gが本格化すれば地方にいながら都会に住む人たちにセッションすることも容易になるでしょう。

今まではトレーナーたちは自分でジムを作り、そのせいぜい半径数十Km以内を商圏に集客し、サービスを展開していくのが主流でした。

もちろん、これ自体は継続して行ってもいいのですが、基本的にオンラインの流れや少子高齢化の波を考えると、オンライン上で何らかの形でクライアントにサービスを提供し、離れた場所にいる人に対してもサービスできるような手法も併用することは必須でしょう。

現状でも、すでにパーソナルトレーニングなどをオンラインで行う試みは増えており、来年から5Gが本格からすることで、よりこれらのサービスが円滑になるのは間違いないでしょう。

今の時代は、何ヶ月もかけてテナントを借り、初期費用を投じて、限られた条件でサービスを展開するのとは、全く違う次元に突入しているという認識を持つことが、まず大切です。

必須条件②全国各地、世界各地でクライアントを獲得

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オンラインの話と少しかぶりますが、リアルの店舗を構え、狭い商圏で仕事をする場合、どの地域であってもそこに住む人たちの属性に合わせたサービス展開が前提となってしまいます。

地方の田舎では若年者向けよりも高齢者向けのサービスが中心になるでしょうし、外国人向けのサービスを展開したければ外国人がたくさんいる場所に拠点を構えなければいけません。

しかしオンラインという土壌も併用で行っていくのであれば、全国各地あるいは世界各地であなたのファンを作っていくことが望ましいです。

今の時代だと、SNSでの発信はタダで出来ますし、ブログなどもかなり安価でできる時代です。それだけに、参入している人が多く競合もたくさんいるのも事実ですが、しっかりと発信のやり方を学び、あなたの活動に興味を示す人を増やしていくことも必須条件になっていくでしょう。

医療という業種は、どうしても地域密着型の色が強くあります。

それとは正反対の戦略とも言えることですが、クライアントを地球規模で見つけるという視点が重要に思います。

必須条件③自分の名前で仕事をする

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これも先ほどの話と少しつながるかもしれませんが、全国各地、世界各地でクライアントを抱えて行こうと思えば、病院などの所属ではなくあなたの個人の名前で信頼を作っていく必要があります

話は変わりますが、江戸時代の呉服屋には、今まで買ってくれた人たちの連絡先などがまとめられている帳簿があり、その帳簿にはロウが塗られていたと言われています。

これは、万が一呉服屋が火事になった時、帳簿を井戸に投げ捨てて火から守るための仕様なのですが、もし仮に火事が起きて商品や店舗がすべて焼け落ちてしまっても、顧客の帳簿さえあれば、またその人達に連絡をしてビジネスを再開することができます

仕事を長く続けていく上で最も大事なものは、商品やハコモノではなく、「あなた自身の仕事に興味を持ち、お金を払ってでもあなたのサービスを受けたいと思ってくれる人たち」とのつながりです。

もしあなたが今病院などの組織に所属していて、その組織が明日なくなった場合、「組織でなく、あなた個人にお金を払ってサービスを受けてくれる人がどれだけいるか?」をイメージしてみましょう。

もし、それで生計を立てることができなさそうなら、クライアントとの直接的な関係構築をしていくことが、あなたの課題になるはずです。

これは、具体的にはリアルの世界、オンラインの世界共に活動したり発信したりして、あなたのファンを獲得していくことになります。

※現場に顔を出したり、SNSで発信したり。

ただし、ここで注意しなければいけないのは、「理学療法士」「柔道整復師」「〇〇認定トレーナー」などの資格を前面に出しすぎるのは、あまりやらないほうがいいと個人的に思っています。

「個人の名前で仕事をする」とは、病院や所属している団体の枠から飛び出す行為でもありますし、所有している資格の枠から飛び出す行為でもあります。

よくスポーツの現場に出始めた人が、「理学療法士として」「鍼灸師として」と資格背景や持っている知識から自分の仕事の範囲を制限しようとするケースがありますが、それは個人の名前で仕事しているというより、資格で仕事をしているということと違いありません

もし、所属先の組織や、あなたが持っている資格などの肩書きがなかったとき、あなたに何ができるか?何がしたいか?

それを整理することが、「個人の名前で仕事をする」ことの最初の一歩になるでしょう。

必須条件④契約先を分散する

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スポーツの現場で活動したり、オンラインを通してクライアントを獲得していくようになれば、個人やチームと何らかの契約をかわしていくことになります。

ここで非常に重要なのが、「時間的にも労力的にも金銭的にも、一つの契約先に依存しない」ということです。

例えば、あなたがとあるプロスポーツチームと契約を交わすことになるとします。

契約は1年間。プロの団体なので、ある程度の報酬も約束されるでしょう。

そこであなたがベストを尽くすことはもちろんなのです、ベストを尽くしたからといってチームに思うような結果が出るかどうかは、また別の問題ですよね。

そしてプロという世界は結果が全てですから、結果が出なければ契約は解消になります。

これは誰もが一度は経験することですが、一つの契約先との関係が切れた時、また全て1から始めなければいけないのは、非常にリスキーな話です。

もし大きな契約を取ることができたとしても、「そことの関係が切れてしまたら?」というリスクヘッジもしながら動くことが、長く続けていく上での秘訣になります。

具体的にいうと、

・現場の仕事をやりながらSNSでも発信する

・一つの地域でクライアントを抱えるのではなく、あらゆる世代や地域にクライアントをもつ

・オンライン、オフライン双方でクライアントをもち、収益を得られるようにする

などです。

仕事をし続けるというのは、種を巻き続けることだと僕は思っています。

種を巻いてすぐに花が咲くことはないように、仕事にも仕込みや育てる期間が必要です。

うまくいったり、大きな契約が取れたりした時ほど、次に備えて種を蒔く(分散する)ことを意識してみましょう。

まとめ

日本市場は様々な課題に直面していますが、それでも日本の中で活躍したい!と言う気持ちは誇るべき部分だと僕は思っています。

一方で、情熱を持って、自分が活躍したいフィールドでやっていくには、相応の戦略を練って行動する必要もあります。

ここに書いたことは、あくまで僕一個人の考えにすぎませんが、参考になれば幸いに思います!

そんじゃーね!