■独立を決意したその後

さて、「今年で病院を辞めて独立する」と決意したからには、その準備が必要でした。

具体的には、病院に退職の相談スポーツの仕事をできる限り増やす経理はじめ、フリーランスとして必要な知識の勉強トレーナーとしてのスキルアップの勉強という具合です。

特に、スポーツの仕事を増やすには限界がありました。

週5で病院勤めをしながら、先の現場に行き母校のサポートもして、ブログも更新して新しい仕事を増やしていく。

さらに、独立に必要な知識も勉強しなければいけない。無論、選手のサポートで難渋することも多々あるので、新たにその勉強も必要。

正直いうと、独立を決意していから実際に病院を退職するまでの10ヶ月ほどは、それまでの人生で一番体力的にしんどかったです

時間がいくらあっても足りず、多分、半年で一日も休んでなかったと思います。

ちなみに、今となって考えればここは反省点で、何も常勤→独立!!と大きく動く必要もなかったのかなと感じています。

僕のように時間に追われてしまうくらいなら、常勤→どこか非常勤で働けるところで週2~3日バイトする→より仕事を広げて完全独立というくらいがちょうど良かったのかもしれません。

昔に比べ非常勤の求人は少ないですが、まだ求めている職場はあります。

交渉次第で非常勤は可能ですから、独立を目指す方はぜひ選択肢に入れておくべきですね。

あ、そうそう。

話は変わりますが、独立に必要な準備とは言ったものの、実質必要な準備なんてほぼないんですよ

個人事業主になるのなんて、税務署に紙切れ一枚(2枚だったかな?)出したら終わります。

一日どころか2時間くらいで終了です。

どちらかというと、皆さんがぶち当たりそうなのは、病院をやめることに対する周りの反応でしょうか。

PT業界から見て、3年目のペーペーがナマイキにも病院やめて独立するとなれば、そりゃ批判の嵐です。

僕の周りは理解ある人もいましたが、少なからずこうした批判は受けました。

間違いなく、これを読んでいるあなたも、病院を辞めて独立するとなれば、誰かに何か言われるでしょう笑

これは、メンタル的に耐えるか、右から左に聞き流すしかないのですが、僕から伝えたい事実が二つあります。

一つは、「批判した人の言うことを真に受けて、その通り行動し失敗しても、その人は責任取れない」ということ。

当たり前ですが、言うのはタダです。

行動するのは責任が伴います。

そして自分の行動は、当たり前ですが自分しか取れません。

だから他人の批判なんて、真に受けるだけリスキーなんですよね。

二つ目は、「結果を出せば、人は面白いくらいに手のひらを返す」ということ。

実際、僕は独立する前にある人から、「西川なんかじゃ無理だよ」と言われました。

しかし、その5年後にその人に再開した時に、「西川ならこの先もやれると思うよ」と言われましたw

人は、目に見える成果がないと批判します。

そして、目に見える成果を出すとびっくりするくらい手のひらを返します。

だから、あなたがもし誰かから批判されていたら、圧倒的に努力し成果を出しましょう。

きっと、その後手のひらを返してくるでしょうから、仲良くするなり縁を切るなりお好きにしてくださいw

ともかく僕は、こうして色んな準備が整い、少しづつスポーツの仕事を増やすことができ、無事翌年3月に、病院を退職し晴れて独立することができました。

この独立に至るまでを振り返って、皆さんに伝えたいことがあるとすれば、チャンスが突然目の前にやってくるから、自分が思っているよりも早くあらゆる準備をしておくことですかね。

読み返すと分かりますが、僕は一人暮らしを始めてから病院を辞めて独立するまで、1年少ししか経っていません

無論、一人暮らしを始めるまでは、しばらく病院で働くつもりだったし、独立という言葉を知ったのもちょうどこのくらいですから笑

しかし、人は行動すると意外なところにチャンスがあるもので、いきなり目の前にやってきたチャンスは、一気に大きくひらけます。

その時に波に乗れるかどうかは、チャンスがやってくるまでにどれだけ準備していたか、だと思うんですよね

例えば、学生時代勉強に明け暮れていなければ、現場に出ても満足にサポートができなかったでしょうし、PT一年目の時に母校と契約の話をする経験を積んでいなければ、契約の話の時にここまで充実した収益をあげられなかったでしょう。

同じように、英語からずっと逃げてきたせいで、独立後数年間は国際的な舞台で活躍することはかないませんでした

今でこそ、年間8回ほど海外遠征についていくようになりましたが、英語を中高からしっかりやっておけば、あるいは学生時代に英会話でも行って話せるようになっていれば、もっと早く道は開けていたはずです。

皆さんはどうか、「10年後のなりたい自分」をイメージして、それに必要なスキルを今から身につけ始めることをオススメしたいです。

10年後のあなたを作るものは今からの積み重ねでしょうし、10年後と思っていたことが実は5年後、3年後にチャンスとなってやってくるかもしれないですから。

■独立後

最後に、独立してからの五年間を振り返って、反省点をお伝えしたいと思います。

独立するまでの準備はほぼなかった僕ですが、打って変わって独立してからは、あらゆることに挑戦し、失敗し、悩まされました。

数え切れないくらいあるので、反省を踏まえて皆さんにオススメしたいことを、4つにまとめてみました。

1、十分な資金を蓄えておくこと

2、経営の勉強(体験)をすること

3、ネット上での発信力を磨いておくこと

4、英語を話せるようになっておくこと

①十分な資金を蓄えておくこと

独立してから最初の難関は、「毎月預金からお金が減っていくこと」です。

よほど経営手腕の強い人なら別ですが、ほとんどの人は独立して仕事が軌道にのるまで赤字が続くことは普通です。

少なくても、僕は独立後数ヶ月は赤字続きでした。

しっかりと収益を立てていくつもりであるほど、赤字が続くと気持ちが折れそうになるんですよね。

毎月減っていく預金通帳を見る恐怖は、体験したものにしかわからないでしょうw

なので、生活費と経費を合わせて、最低半年間、できればそれ以上売り上げが立たなくても生きていけるだけの貯金を持って独立することをオススメします

②経営の勉強(体験)をすること

「最高の経営の勉強は、実際に経営することだ」とはよく言われますし、僕も基本的には賛成です。

実際、名だたる起業家は経営学を勉強したことないって人も多いですし。

しかし、最低限「数字」には明るくなっておくべきです。

例えば、あなたが将来独立したいとして、現時点でスポーツの活動でいくらの利益が上がっているか計算できますか?

利益は「売り上げー経費」なので、サポートでいただいたお金から「活動にかかった経費」を引かなければいけません。

例えば契約しているスポーツ現場に車で向かった時、そのガソリン代や高速代は経費になります。

また、トレーニングで使用した用具にかかったお金も、同じく経費になります。

これらを差し引いて利益が出ないことには、あなたの生活は独立後どんどん苦しくなってしまいます笑

僕は、実は数字が苦手で、独立すると決めたPT3年目の春の時点では、「売り上げ」が10万円ほどでした。

「10万円あったら、死にはしない!」と思っていましたが、今計算すると経費を差し引いた利益は5万円ほどだったので、マジで数字に弱かったのがよく分かります笑

現場だけならいいですが、将来ジムを経営したいという方は、ぜひその勉強もすることです。

間違っても、赤字のうちから独立してはいけませんよ笑

③ネット上での発信力を磨いておくこと

これは②の経営の話と少し被りますが、SNSやブログといったオンラインでできる発信は、ぜひ力を入れるべきです。これは実名顔出しでなくても、匿名やペンネームでも構いません。

なぜなら、スポーツに限らずあらゆるビジネスにおいて、最も大切なのは「顧客リスト」だからです

顧客リスト、つまりあなたの商売にどれだけの人が興味を持ち、お金を払ってでもサービスを受けたいと思っているか

この数が多いほど、あなたの仕事は安定的に広がっていきます。

僕自身は、独立前はブログがメインで、独立後はFacebook、ここ4年ほどはツイッターに注力するようになりました。

目安として、ツイッターであれば「フォロワー10000人」いれば生きていくことができると言われています

(※2022年10月追記:現在フォロワー13,500人ですが、なんだかんだ生きていますw)

このテキストもしかりですが、あなたがスポーツに関わることを発信し続け、それを必要としてくれる人が増えていくにつれ、「お金を払ってでもサービスを受けたい!」となります。

例えば、遠く離れた地域に住む腰痛の選手に対して、いくらかお金をいただいてzoom越しに評価しセルフエクササイズをしてもいいでしょう。

僕はコロナ前の2019年、中国の雲南省にあるテニスアカデミーで住み込みで仕事していましたが、今でもその選手たちにzoomでセッションすることがあります。

https://twitter.com/physio_tennis/status/1144089715374583808

インターネットでの発信は、あなたの活動の可能性をさらに高めてくれます。zoomなどであれば、国境すらも飛び越えられます。

先の話ではありませんが、これも「早めに準備」できているといいですね。

④英語を話せるようになっておくこと

現在のトレーナー界は、どんどんグローバル化していきます

今以上に海外のフィールドで活躍するトレーナーやPTは増えていくでしょう。

なぜなら、世界がそれを望んでいるから(ニーズがあるから)です。

実際に去年僕は8回の海外遠征を通して実感したのですが、日本人トレーナーの株は年々上がってきています。

一方で、英語を話せるPTとなると、かなり数が絞られますよね。

あなたがもし英語を話せて、スポーツのサポート経験も豊富であれば、チャンスは信じられないくらい広がります。

ただし、僕の体感では英語を話すスキルを身につけるのは、一からPTになるのと同じくらいの労力が必要です。

なので、早めに勉強を始めることをオススメします。

■最後に

今回のテキストは、以上となります。

最後まで読んでいただいて、ありがとうございます。

少しでも、スポーツへのイメージが鮮明になれれば幸いに思います。

読んでいて感じられたかもしれませんが、僕は本来スペックが高いわけでもないし、器用に立ち回れるわけでもありませんでした。

ただ、いい意味でも悪い意味でも、この道はやってきたことは裏切らないと感じています。

僕は無駄な失敗を多くため大変な時期もありましたが、これを読んだ皆さんは、僕の失敗を糧にして、より最短ルートでチャンスを掴んでいってもらえればと思います

なお、このテキストは購入者の皆さんからいただいた質問に答える形で、随時追記していこうと思います。

なので、テキストの内容に関してご質問があれば、ツイッターのDMかメールなどでご連絡ください!

あなたが第一線の舞台で活躍できることを祈り、このテキストの締めくくりとさせていただきます。

ありがとうございました。

Good Luck!!

西川匠

■追記、Q&A

1.NSCAの教材は何で勉強しましたか?

A. NSCA CPTの公式テキストで勉強しました。

独学で教材の中身を勉強し、またNSCAの実技系セミナーで理解を深めた、という感じですね。

ただ、NSCA系は勉強されると分かると思いますが、基礎知識としては結構浅めです。

また、それを元に現場で実践すると、教科書的にうまくいかない場面が多く出てきます。

個人的には、テキストでしっかり勉強して、それを現場で実践してみて「理論と実際の溝」を埋めるのが良いかと思っています。

なお、僕は大卒の資格がなかったためにCPTの勉強をしましたが、大卒以上の学歴がある方はCSCSを勉強されることをオススメします。

下記に、NSCAのテキストリンクを貼っておきますね。

NSCA CPTテキスト

Q2 就職先の選び方で、私が検討している職場では、職場のチームでスポーツ現場と契約されていて、そこに病院のスタッフとして参加しています。こうした病院を選ぶのは良いでしょうか?

A.これに関しては、質問者様の目指すところによるかと思います。

単純にスポーツ現場での経験を養いたいのであれば、いいシステムでしょう。

一方で、将来自分で現場と契約したい、あなた個人の名前でスポーツの仕事をしていきたい、あるいはジムを作りたいなどの目標がある場合(独立含む)、あまりメリットは無いように思います。

理由は二つあり、一つはテキスト上でもポイントとしてあげているように、「自分で動く時間」が少なくなるからです。

チームとして現場に出るのであれば、当然それは病院業務外の時間を使うことになるでしょう。

そのぶん、あなたが個人の活動に割く時間は限られます。

また、チーム(病院)として抱えている現場に、あなたが個人的に営業活動することはタブーとされています。

例えば、「アスリートケア」という団体は、甲子園のメディカルサポートをしています。

あなたがアスリートケアの一員として甲子園のサポートをしている間は、そこでサポートしている選手に「個人的に見ようか?」と提案するのはタブーです。

なぜなら、甲子園サポートの活動の場を提供しているのはアスリートケアだからです。

スポーツ現場では、往々としてこうした問題があります。

つまりあなたが病院チームの一員としてスポーツ現場に出ているのであれば、その現場は今後あなたの個人的な活動に繋げることは難しいし、するべきではありません。

そうなると、病院業務・チームでの現場活動の他に、自分自身でスポーツ現場の仕事を広げていく必要が出てきます。

これは時間の問題で、現実的とは言えないですよね。

もう一つの理由は、自分自身で交渉していく力が身につかないことです。

すでに用意されている現場にいくのは、単純に経験を積むのには良い機会です。

しかし自分で動き提案し、失敗を繰り返していくことで仕事を広げる実力がつきますし、あなた個人の名前が売れるようになっていきます。

大変ですが、もし個人の名前で売っていきたいのであれば、こうした職場はやめたほうが無難と言えるでしょう。