こんにちは、西川です。
最近、こうしたテキスト記事を書いていなかったのですが、久しぶりに執筆してます。
ここ数年、トレーナーとしての活動だけでなく、自身が所有する株式会社にて、スポーツを軸にした地域活性化やメディア運営、商品開発など、様々な活動をしてきました。
最近だと、国内テニスのプロリーグ立ち上げにも広報として関わらせていただくようになり。
【お知らせ】
一般社団法人プロテニスリーグ機構(PTL @2022PTL)にて企画・運営で関わらせていただくことになりました。広報がメイン担当になります。
Jリーグやプロ野球のように、国内プロテニスをリーグという形で盛り上げていきます!
来春、本格始動予定です。#信じようテニスの力を pic.twitter.com/xY6K1BAwne
— 西川 匠 🌏 (@physio_tennis) April 14, 2021
こうした活動を続けることで、スポーツ経済、スポーツビジネスとはどんなものか?
全体像が見えてきたと共に、スポーツ業界が抱える課題も見えてきました。
「どうやったらスポーツで今以上の収入を得られるようになるの?」
「スポーツで食べていくにはどうすればいいの?」
「今はスポーツ業界でもネットが発達してるけど、そんな中で正しいやり方ってあるの?」
「そもそも、好きなことで生きていくってできるの?」
多くの方が抱えるこうした疑問に、スポーツ経済(マクロ、ミクロ両方)の視点からお話しようと思います。
スポーツ現場で活動する指導者やトレーナーの方も、病院や整骨院で勤務されているセラピストの方も、自分で治療院やジムを経営されている方も、これからスポーツ分野に飛び込みたいと思っている方も、そして何より主役である選手の方にとっても、スポーツに片足以上突っ込んでる方はぜひ読んでみてください。
今のスポーツ経済は「応援」で成り立っている
まずマクロ(全体像)の視点から。
大前提として知って欲しいのは、スポーツ業界のお金の多くは、スポンサーと放映権で回っています。
↑これは一例ですが、日本の多くのスポーツ協会は、似たような収益構造を持っています。
多くのスポーツ協会は、収入がおよそ20億ほど(ラグビーは倍の40億、サッカーは一桁違い約200億)。
その割合は、スポンサー(からのお小遣いっつーかおこぼれ)による収入が60%以上、30%~35%が放映権、そしてチケット販売やグッズ販売、ファンクラブ会費などが、残り5~10%を占めます。
つまり、日本のスポーツは現状、金持ち企業のお小遣いとテレビ放送の放映権で存続している状態であって、スポーツそのものの価値提供による収益はほとんど上がっていないわけです。
※誰かが「ヒマを持て余した神々(金持ち)の遊び」って言ってたっけな。
よく「スポーツは金にならない」と言われます。
これは個人レベルの話ではなくて、マクロでみたスポーツ経済も、いまだスポーツそのものの価値では収益を出せていないんですよね。
スポーツの価値をいかに提供して、市場全体で収益が出るように盛り上げられるか?
スポーツに関わってる人は全員、これを考えることからスタートしましょう。
同業者同士で争っていたり、「自分はトレーナーだから体のことだけ知ってれば良い」とかナンセンスな思考はナシです。
業界全体が良くならないと、あなたが食べていくことはできないわけですから。
収入の大半を占めるスポンサー費の実情
前述の通り、前線で戦うスポーツ選手も、それをサポートするトレーナーやセラピストも、選手を育成する指導者も、スポーツで飯食ってる人間は少なからず「企業によるスポンサー費用」に依存してるのが現状です。
では、そのスポンサーって、何が目的でお金を出してるの?って気になりません?
結論を言うと、お金を出す個人や企業、その理由の多くが「応援」なんですよね。
あえて意地悪な言い方をすると、金あまりの企業によるお情けや、企業同士の付き合いです。
これが一番のポイントであり、僕が実態を知って一番驚いたことです。
だって本来、スポンサーとしてお金を出すのは「先行投資」の意味合いが強いじゃないですか。
「〇〇の選手と契約したら、色んな人にウチの企業がいいイメージをつけられる。そしたら売り上げ上がるやん」みたいな。
だけど実際はチガウ。応援なんですよ。
「〇〇選手は、お父さんと仲がいいから」
「あそこのスポーツチームは、うちが納品してる企業が所有してるから」
「地元で頑張ってるクラブチームはあそこだけだし、どうせ納税しなきゃいけないならその分寄付しよっか」
これが収入の大半を占めるスポンサー収入の実態、マクロからみたスポーツ経済の実情です。
ちなみに、このスポンサー収入、お金を出してるのは、
①地元企業
②付き合いのある企業
③同業者
が中心になります。
↑2020年1月、全豪オープンジュニアの予選。ここでもホスピタリティのBBQを提供しているのは地元企業でした。
次に、個人で活動する指導者さんやトレーナー、民間で運営する中小スポーツクラブやスポーツジムの構造を見てみましょう(読者的にはこっちがメイン?)
我々ミクロのスポーツ経済は、「個人の課金」一択
マクロのスポーツ経済がこんな感じだと、当然私たち末端や現場で活動しているイチ事業者も、「サービスで価値提供して収益を得る」という当たり前のことに苦労するわけです。
では、我々個人や中小零細企業として活動する者たちの経済構造はどうでしょうか。
スポーツジムで活動するパーソナルトレーナーや、フリーでレッスンするコーチ、出張で背術するセラピストも含め。
現場レベルの大きな収入源は、「サービス提供するお客さんからの課金」が一番の収益源になります(当たり前ですが)。
民間のスポーツクラブであっても、自費の治療院やジムであっても、はたまた保険診療であっても構造は似たり寄ったりで、
①チラシやネットなどで広告かける
②無料あるいは安価の初回体験で、継続契約してもらう
③会員として月額課金を続けてもらい、広告費を回収→続いた分だけ利益(ここから人件費が出る)
というもの。
おおよそどの業種でも同じですね。
※自費での治療院やジムなんかでは、月額ではなく回数券(だいたい高額ww)にして広告費+利益としている所もあります。
この構造のいい悪いの議論は置いといて、ミクロのスポーツ経済は「対面のお客さんからいただくお金」だけで回ってるのが実態で…
個人的に、このビジネスモデルは結構危ないと思ってます。
理由は以下の通り。
- 日本市場は長く続くデフレと不景気により、私たちのようなサービス業にお金を払い続ける余裕のある人が少なくなっているから
- 上記は人口減少でさらに規模が縮小するから
- 個人かつ対面を前提にしたサービスは商圏が限られるため、上記の制約を受けやすい&今回のコロナショックのような疫病リスク・災害リスクにめっぽう弱いから
特に最初の部分は肝心で、皆さんが自身のサービスにいくら自信があって高単価で打ち出しても、そこに価値を感じお金を出し続けられる顧客は少ないんですよね。
「そんなことはない!全国探せばお金に余裕があって価値を理解してくれる人は大勢いるぞ!」
という意見もあると思います。
それはそれで正しいのですが、ではあなたがサービス提供できる商圏に、該当する人はどのくらいいるでしょうか?
従来のように個人かつ対面を前提としたサービスは、どうしても商圏というものが存在します。
どうしてもこのモデルでやりたいなら、
①白金や芦屋のような高級住宅街でやる
②煽ったコピーや誇大広告で、高額サービスを売りつける
(これは自費の治療院でめちゃ多い)
しかなくなります。
もう皆さんお気づきだと思いますが、今の日本市場においてスポーツで価値提供をして収益を上げたいのなら、根本的に従来のビジネスモデルから脱却する必要があるわけです。
(僕は5年前くらいからこの構造に疑問を抱き、色々やってました)
今後、我々がとるべき方向性は?
「従来のビジネスモデルからの脱却」と書いたばかりですが、方向性としては今の延長線上でいくか、収益構造を変えようと奮闘するかの二択になるでしょう。
今の延長線で行きたい人は、、、
そのスポーツが好きな大企業・中小企業(医療法人やお医者さん含む)とのコネを作りまくりましょう。
カッコ悪くても頭を下げ、「日本特有のお付き合い文化」に徹する。
これに限ります。
スポーツを好きなお金持ちは多いです。
個人・企業問わず。
そして、マクロにおいては、「スポーツ大好き&その道だけで生きてきた人間が四六時中動き回る」より、「楽天の上層部に進言できるレベルのスポーツ愛好家のビジネスマンが営業する」方が、スポーツ市場に莫大なお金を持ち込んでいます。
ミクロにおいては、スポーツが好きで高いお金を払ってもパーソナルなサービスを受けたい医者や経営者、特定の選手やチームを応援したい企業などは大勢います。
彼らをガッツリ捕まえ、関係を継続しましょう。
個別の法人営業の手法については今回の主旨から外れるので割愛しますが、方向性としては「コネに走る」ことになるので、特に血気盛んな若い方などは嫌がる方向性かもしれません。
ただ個人的には、これはこれで一つの道だと思います。
どんな方法だろうとスポーツ経済の一役を担っているのは間違いないですし、綺麗事だけで沈没してる人より、よっぽど立派で覚悟を感じます。
構造を変えたい人は…
もう一つは、
「マクロ→スポンサーからのお小遣い&テレビの放映権におんぶだっこ」
「ミクロ→広告ぶん回して商圏範囲の個人から対面でお金もらい続ける」
という現状の収益構造を変えようと奮闘する方向性。
多分、読者のほとんどはこちらの方向性に興味があるのでしょう。
なのでここに関して、僕のアイデアや今取り組んでいる方向性を2つほど紹介します。
参考になれば幸いです。
①放映権の新しい形(youtubeなど動画媒体を強化→バナー広告)
スポーツ=テレビというのは、何も利権だけの話ではなく、スポーツ側がテレビ放送を手放してしまうと、いよいよ収益源がなくなってしまうというのが大きな要因なわけです。
では、テレビに変わる映像の収益化はどんな手段があるか?
すぐに思いつくのは、youtubeなどの動画系SNSですね。
結論いうと、個人などミクロであるほどyoutubeなど動画媒体(SNS含む)は育てることは必須です。
ただ(ご存知の方もいると思いますが)、youtubeの広告収益って、かなりコスパが悪いんですよね。
youtubeをそれなりに育てて仮に5万人の登録者を抱えるようになったとしても、それだけで得られる収益は月数万~10万円程度。
それなら、広告収益ではなく、youtubeを自身のメディアとして育て、その数字を持って各企業に営業し放映権を得る=SNSを使った新しい放映権の形を自分で作るという考え方の方が現実的かと思っています。
具体的には、テレビのように、ひと枠いくらというバナー広告を企業に対して提供するとかは、ベタですがわかりやすいですね。
(↑テレビ局はプロスポーツの試合にお金を出して放映権を買いますが、それ以上の金額をバナー広告の企業に売っていますね)
テレビは端末の普及度や視聴率からリーチを出し、「〇〇人に露出効果が期待できるからバナー広告いくらね」と企業に提案します。
それと同じで、自身のyoutubeチャンネルでバナー広告を提供するわけです。
もちろん、テレビと比べるとその広告料の規模はかなり小さくなります。が、自分のメディアで自分の経済圏を作ることができるという点で、ある程度の可能性があると思います。
ちなみに、先日Tiktokを運営するバイトダンス社の人と話をする機会があったのですが、企業的にyoutubeの再生回数1回は10円、Tiktokは1再生約8円の価値があるとの意見もありました。
↑弊社で3月から始めたTikTokアカウント。幸いにも良いスタートを切ることができ、解説から1ヶ月で月間150万回の再生回数(インプレッションレベル)を獲得しました。
話のわかる企業にとっては、このアカウントのパワーはすでに1000万円以上の広告価値があることになります。
言い換えるとこれは、「これから1ヶ月間、このアカウントの全動画に御社のバナーを掲載します。だから露出効果として1000万ください」がまかり通るということになります。
流石にここまで単純計算はできないですが、BtoBの営業が得意な方、金余りの企業へのパイプを持っている方は、交渉する際の大きな武器になるでしょう。
※当然ながら、営業するならば、キャッシュが余ってるかつyoutubeやTiktokの露出価値を理解してくれる企業一択です。田舎の超アナログ系の企業にこの話を持っていっても100%無理でしょう。価値を理解できない人や企業に教育するよりも、最初から価値の分かってる人に提案すべきです。
②独自サイトでコンテンツ課金の仕組みを作る
これは個人で動いているスポーツ選手(アマ・プロ)や、民間のスポーツクラブなども取り組めるアイデアだと思っています。
僕はテニスが専門なので、テニスクラブを例にしてみると…
①そのテニスクラブウェブサイトで、会員制のページを作る
(オンラインサロンでも、ファンクラブでも名目はなんでも良い)
②選手や一般の人など、クラブに所属している人が自由にコンテンツをアップする
③コンテンツを見たい人や所属選手やクラブを応援したい人が、月額課金で閲覧する
大まかにはこんな感じです。
テニスクラブやスイミングスクールなど民間のクラブは、ビギナー含め一般愛好家向けのコースもあれば、ジュニアや競技者向けのコースもあると思います。
この、競技コースや上級者コースに通っている人のコンテンツ(技術的に意識してることだったり、普段取り入れてるエクササイズだったり、メンタルだったり)は、実はニーズがあったりするんですよね。遠くのプロよりも、いつも見ている上手な人の方を求めている人はクラブ内にたくさんいます(クラブ外にももちろんいると思います)。
そこで、選手を含め所属している個人が自由にコンテンツをアップできる仕組みを、クラブの公式サイトとして提供してあげる。クローズの会員制コミュニティということですね。
WordPressに、ウェブサイト運営に、革命を。
あなたにSNS運営者という新しい視点をプレゼントします。今までなかなか辿り着けなかった景色から一緒にワクワクしませんか?
—
ステージが激変するSNSサイトを構築する
WordPressテーマ「ZOOMY」https://t.co/iFLkuWlaS4https://t.co/PvbesdhWU9 pic.twitter.com/0YC1GiYOmK— WordPressテーマTCD (@tcd_jp) January 30, 2019
↑今はワードプレス でも、こんな風に5万円程度で会員制(クローズド)のSNSを作ることができます。
ここにStripeなど独自決済を挟むことで、民間クラブや個人でも簡単に会員制サイトを作ることが可能です。
ポイントは、コンテンツ発信を継続する仕組みもセットで考えることでしょう。
誰か一人が自力で運営しようとしても、労力・ネタ共に限界があります。
そこで記述の通り、所属している選手など関係者が自由かつ相互にコンテンツをアップするメリットを提示することです。(例えば、upしたコンテンツのいいね数やPVに応じて報酬を渡すなど)
こうしたクローズのコミュニティの仕組みをしっかり作り(最低限の人員も確保し)、月額500円~1000円程度で充実したコンテンツを継続して提供できれば、応援している人にとっては微々たる出費でしょうし、コンテンツが充実するほどコスパ良しと会員になってくれる人も増えるでしょう。
月額1000円で100人に満足していただけたら、それだけで月10万円の収入源になりますし。
これをクラブの活動費や人件費に回してもいいだろうし、個人の選手なら活動費や生活費にするのもいいと思います。
規模としては小さくローカルですが、これも自分たちで経済圏を作ることができるので、少なくてもスポンサーのお小遣いに頼るという収益構造を脱却する一手にはなるでしょう。
この数年の活動を経て感じてること
具体的手法は今回紹介したもの以外にもたくさんあると思います。
ですがそれよりも、今のスポーツ業界を取り巻く経済状況を見ると、構造からテコ入れしなきゃいけないなと強く感じます。
多くのスポーツは、ここ数十年スポンサーにおんぶにだっこでした。
それは日本自体が豊かであった裏返しかもしれませんが、同じような方法を今後も続けるのは無理ゲーだと思っています(実際に活動している選手が、一番実感しているかもしれません。昔よりもスポンサーが付かなくなったという話は、耳タコで聞かれていると思いますし)。
この記事をキッカケに、新しい形でスポーツ市場に価値を提供でき、小さくてもご自身たちで経済圏を作っていただけると嬉しいです。
そんじゃーね!